建物の構造体を構成する鉄骨には、その形状や鋼鉄の仕様などによって、様々な選択肢があります、という話を前回は取り上げました。
鉄骨に仕様によって納まりのパターンは色々と変わってくることになりますが、そのあたりの細かさも鉄骨造の大きな特徴と言えるでしょう。
とにかく鉄筋コンクリート造(RC造)に比べると、鉄骨造(S造)というのは、納まりを検討する際に色々と細かい内容が増えてくる気がします。
それはつまり覚えることが多いということになりますから、建築に関わる業務をしている方の中にも鉄骨造があまり得ではない、という方は結構いました。
まあ鉄骨造は難しいですから。
私の個人的な感想をここで書かせてもらうと、こうして解説しようとしている時に書くのもどうかとは思いますが、私もそれほど鉄骨造が得意とは言い難いと思っています。
とまあ私の気持ちはさておき、今回は鉄骨造が持っている特徴にはどのようなものがあるのか、というあたりの話を取り上げてみたいと思います。
まずは鉄骨造の特徴を箇条書きしてみるとこんな感じになります。
・工場で製作してくる製品である為品質管理がしやすい
・工場で製作する為施工する期間が短くて済む
・RC造に比べると部材を小さくすることが可能
・比較的大きなスパンを飛ばすことが出来る
・熱に弱い
・錆びる危険性がある
・断熱性能は低い
という感じになっていて、どうしても鉄筋コンクリート造との比較になってしまいがちですが、鉄という材料を使うという事と、工場で製作してくるという部分が大きな特徴になっています。
鉄筋コンクリートと違い、鉄骨造で使用されるのは鉄になりますから、大きさを決めた製品を工場で製作して、それを現場に搬入して組み立てるという流れになります。
まさか現場で鉄を材料から作る訳にもいかないですから、こうして工場で製作してくるのはある意味当然のことだと言えるでしょう。
工場で製作するからこそ品質管理がしやすくなって、工場で出来る事はやってくるわけですから現場での作業が少なくなる、という事で、これが鉄骨造の大きな特徴になります。
工場で製作するからこそ、事前に検討して図面を整える作業が絶対に必要になってきて、この検討が非常に大変な作業になる訳ですが…
こうした作業は施工者の業務になっています。
鉄骨の検討はかなり大変な業務になりがちなので、鉄骨を担当する方は様々な知識を持ったベテランである場合が多いです。
これは後で詳しく説明していきますが、鉄骨造では様々なものを取り付ける為の部材を工場で取り付けておく必要があります。
それを事前に検討して部材を取り付けておく、という業務はなかなか大変で、全ての部分について納まりを把握しておく必要があるんです。
後は鉄が持っている材料の特徴が鉄骨造には色濃く出ます。
意外に思われるかも知れませんが、鉄は非常に熱に弱いので、火災などで500℃を超える熱が発生した時点で、構造体としての強度は大きく減っていくことになってしまいます。
このあたりは鉄筋コンクリート造と大きく違う部分だと言えるでしょう。
後は鉄ですから当然錆びやすいので、外部に露出するのは出来るだけ避けたいところです。
とは言っても、マンションの外部階段などを見ても分かりますが、外部に鉄が使われるパターンは結構多く、絶対にダメという訳ではないですが…
雨がかかるような部分の鉄骨は「溶融亜鉛メッキ」という処理をしておく必要があり、見た目が結構変わってしまうという問題もあります。
こうした鉄骨造が持っている特徴は、鉄筋コンクリート造にはないものが多いので、そうした特徴を求めて鉄骨造を採用する建物は結構多いです。
知識の使用頻度という事を考えると、ここで鉄骨造の納まりに関する知識を増やしておくことで得られるメリットは大きいのではないかと思います。