鉄筋コンクリート造(RC造)の建物で考えなければならない項目はたくさんありますが、コンクリート壁の収縮によるひび割れ対策も非常に重要な要素になります。
今回はそんなコンクリートのひび割れに対して、設計・施工段階でどのようなことが出来るのか、というあたりを取り上げてみたいと思います。
まずは鉄筋コンクリートで造った壁にひび割れが発生するのはなぜか? という部分について考えてみると…
コンクリートの壁にひび割れが発生する原因はいくつかあって、それらを細かく追求していくとかなり深い話になってしまいますので、ここは少しシンプルに考えることにします。
コンクリートを打設する際には、組み立てた型枠に水とセメントと骨材を混ぜた生コンを流し込むことになります。
生コンが時間の経過によって次第に硬化していき、コンクリートの強度が出た時点で型枠を解体する、という流れでコンクリートは造られていきます。
コンクリートを打設した際の水分は、型枠が解体されて建物が完成した後も少しずつ乾燥していくことになります。
コンクリート内の水分が乾燥していくのは仕方がない事で、構造的に大きな問題がある訳ではないのですが、コンクリートは乾燥していく過程で少しずつ縮もうとするんです。
縮もうとするコンクリートに対して、独立しているコンクリートであればほんの少し縮むだけの話になるのですが、壁は柱や梁に繋がっているため壁だけで縮んでしまうことは出来ません。
縮もうとする壁に対して周囲ががっちりと固定されている事で、その結果として壁にひび割れが出来てしまうというような流れになります。
実際は荷重だとか振動だとか温度差による収縮などもありますが、コンクリートを打設した際に必ず発生するのはこの乾燥収縮によるひび割れです。
コンクリートを構成する水分などを考えていくと、この水分の乾燥によるひび割れというのは、どうしても発生してしまうものだ、ということをまずは理解しておく必要があります。
近年自分が住む家の性能について関心を持つ方が増えてきていて、小さなひび割れでも敏感に反応してしまう傾向にあるような気がしますが…
ひび割れはコンクリートの特性を考えるとどうしても出来てしまうものなので、小さなひび割れによって構造体が損なわれることはありませんので安心して欲しいと個人的には思っています。
あまりにも大きなひび割れがある場合は別ですけど、小さなひび割れがあるのを見て、コンクリートの中もひび割れだらけだと思うのはちょっと違います。
とは言っても、もちろんひび割れがあること自体は歓迎するようなものでもありませんので、なぜコンクリートのひび割れが問題になるかを考えてみましょう。
コンクリートにひび割れが発生して困るのは大きく分けて二点。
・見映えが悪くなってしまうので意匠的に厳しい
・ひび割れから水が入ってくる懸念がある
という事で、やっぱりまずは見た目ですよね。
外壁のコンクリートがバキバキにひび割れている状態は、当たり前の話ですが見た目的に良くないので、建物の価値として問題があります。
ひび割れを補修したとしても、結局はその痕跡が目立ってしまうことになるので、建物の見た目が残念になることに変わりはありません。
次に建物の性能的な話として、そのクラックから水がコンクリートの内部に少しずつ侵入してくる可能性がある、という問題があります。
鉄筋コンクリートの中は基本的にアルカリ性なので、内部にある鉄筋が錆びてしまう心配はないのですが、さすがに水が常時入ってくる状況になったら鉄筋は錆びてしまいます。
鉄筋は錆びると膨張しますので、コンクリートの中で鉄筋が少しずつ錆びてきて膨張が進むと、ある時点で鉄筋の外側にあるコンクリートを押し出してしまいます。
そうなると当然コンクリートは部分的に剥がれ落ちてしまい、その部分は錆びた鉄筋が露出してしまう、という大きな問題に発展することになります。
これをコンクリートの爆裂と呼び、こうなると建物の見た目にも構造体としての性能にも大きな問題が出てくることになります。
ひび割れから水分が入って鉄筋が錆びてきた時点で、爆裂までいかない状態であっても、鉄筋の錆び汁などが出てきてしまうので、見た目は非常に悪くなってしまいます。
こうした問題が発生しないように、建物を設計・施工していく段階では、コンクリートのひび割れ対策を色々していくことになります。
次回はその具体的な方策を紹介します。