構造体である梁の高さと天井高さ、そして建物の階高について考えていくと、どうしても天井裏のスペースというのは狭くなってしまいがち。
前回はそのあたりについて少し考えてみました。
建物の高さには制限があって、設計者はその高さを守った上で出来るだけフロアを増やしたいと考える訳ですから、1フロアの階高はどうしても最低限にならざるを得ません。
また、人が利用する範囲であまり天井の高さを低くしてしまうと、開放感が感じられないというか圧迫感が出てしまうので、設計者としては出来るだけ天井の高さを上げたくなります。
階高は最低限として、天井高は出来るだけ高く。
このような考え方で建物の設計を進めていくと、どうしても残りのゾーンである天井裏スペースが少なくなってしまうのは仕方がない事だと言えるでしょう。
もちろん最終的には人の目に触れない部分になる天井裏スペースですから、無駄に大きく取る必要はないのですが…
それでも必要最低限のスペースというのはあるので、少なくとも必要とされるスペースは確保しておいた方が良いはずです。
前回も取り上げましたが、天井裏スペースには構造体である梁も入ることになるので、最低限過ぎるスペースだと梁を隠すだけで精一杯という状況になってしまいます。
天井裏に鉄筋コンクリート造の梁がぎりぎり隠れる状態であれば、最終的に見えなくなる訳ですから特に問題ないような気がしてしまいますが、実際はそうでもありません。
天井裏には空調のダクトや電気の配線、そして給水や排水などの配管がところ狭しと配置されることになって、その為にある程度天井裏のスペースがどうしても必要になってくるんです。
その為には、構造体である梁を隠すだけではなくて、配管やダクトが充分に展開出来る為のスペースが必要で、それが確保出来るかが問題になってきます。
スイッチを入れると天井に埋め込まれた照明が点灯し、空調のスイッチを入れるとやはり天井に埋め込まれた吹き出し口から冷たい空気が出てくる。
これは建物を利用する側からすると当たり前の事だと思いますが、その当たり前を実現するには様々な設備的な検討が必要で、その為に天井裏のスペースはある程度必要になってきます。
そうした状況にも関わらず、天井裏スペースは大梁が隠れる程度の寸法で精一杯では、確実に設備的な要素が納まらなくなってしまいます。
これは結構ある話困った話になるので、そうならない為にも綿密な検討が必要になってきます。
天井裏という見えない部分の検討をすることによって、最低限の階高である程度の天井高さを確保することが可能になります。
逆にそうした検討を綿密にしておかないと、最終手段として天井の高さを下げて設備を納めるしかない、というパターンが頻発する事に。
部屋の用途として倉庫などであれば天井高を下げても良いかという気がしますけど、メインの部屋ではなかなか天井高を下げたくない場合が多いかと思います。
かと言って、天井高を確保する為に空調をなくすという訳にはいかないので、どちらもバランス良く検討をしていく事が求められるんです。
結果的に天井を下げるしか選択肢がない状況にならない為にも、ある程度天井裏のスペースについて事前に検討しておくことが重要になってきます。
もちろん天井高を下げるにも限界がありますから、施工段階で納まらずに破綻している状況にならない為にも、少しだけでも余裕を見た設計にしておきたいものです。