前回から鉄筋の継手方法について説明をしてきて、重ね継手の考え方だけしか説明出来ていないので、今回はその続きです。
□ガス圧接継手
読んだままの説明になってしまいますが、鉄筋の端部同士をガス圧接によって接合していく方式をガス圧接継手と呼びます。
ガス圧接とはなにかというと、鉄筋の端部同士を付き合わせて押し合いながら、1200℃~1300℃程度に加熱していく事で鉄筋同士をつなげていく、という考え方です。
鉄筋を溶かして接合するのではなく、赤く熱せられた状態で鉄筋同士を押し合うことによって、接合部には鉄筋径以上のふくらみが出てくることになります。
このふくらみによって鉄筋同士が接合される訳ですから、ふくらみの大きさには厳密な規定があり、それを守ることで鉄筋同士の接合性能を確保しています。
□溶接継手
これまた読んだままの説明になりますが、鉄筋同士を溶接によって接合させる方式を溶接継手と呼びます。
ガス圧接継手と似たようなイメージになってしまいますが、溶接継手の場合は鉄筋の端部に少し隙間をあけておき、溶接金属によって接合するという違いがあります。
鉄筋の端部同士をくっつけている訳ではなく、少し隙間をあけているため、その隙間に溶接金属がうまく入るように裏あて材が必要になります。
□機械式継手
機械式継手とは、鉄筋の端部同士を加熱して接合したり溶接金属によって接合するのではなく、もうひとつ別の部材を用意してそれによって鉄筋同士を接合するという考え方の工法になります。
鉄筋の表面にある凹凸を利用して固定していく為、異形棒鋼でなければこの機械式継手は成り立たない工法だと言えます。
鉄筋の端部は当然ですが出っ張っているため、出っ張っている鉄筋同士をつなげる為の部材は両側に差し込み口があるような形状になります。
両側からネジ式みたいなイメージで鉄筋を入れていき、最後は機械式継手の中にモルタルを充填したりして鉄筋同士を接合していく感じです。
鉄筋の継手工法についてはだいたいこんな感じになるかと思います。
設計者であっても施工者であっても、恐らく自分で鉄筋の継手を施工する機会はあまりないとは思いますが、それでも概要をきちんと把握しておくことが何よりも重要になってくるはずです。
これは鉄筋の継手だけに言える話ではなく、建築の納り全般に言えることだとは思いますが…
構造体として考えると、鉄筋の継手部分というのは当然継手がない部分よりも弱いですから、荷重が重点的にかかるような場所に継手を設けることは不可とされています。
同じ梁であっても力がかかりやすい端部を避けるとか、中央下部を避けるなどして継手位置を設定していく事が非常に重要になってきます。
このあたりの方針は構造設計者が行い、その見解を構造図に示すことになりますから、施工者であれば構造図に記載された内容を厳守して施工を進めることになります。
そして実際の施工に際しては、コンクリート打設前に工事監理がきちんと配筋された梁を検査して問題ないことを確認していく、という感じです。
あまりにも断面形状が小さい梁などであれば、継手によって鉄筋の納まりが非常に厳しくなる事もありますので、やはり定着やかぶりと同様に事前の検討が重要になります。
構造設計図に記載されているのは柱や梁などそれぞれの標準的な配筋であり、それぞれが取り合う納まりについては検討されていない事も多いです。
そのあたりの細かい納まりについては、施工者が手戻りにならないようにするという目的で、事前に色々と検討しておいた方が良い項目として挙げられます。
設計者であっても施工者であっても様々な業務が膨大にある中で、鉄筋の納りだけを検討する訳にはいかないので、事前の検討が難しい場合も多いです。
このあたりの話になってくると納りではなく人員の問題ですから、ここで色々書いても仕方がない内容になってしまうので難しいですが。
それでも最低限ポイントを押さえた検討をしておくことによって、後々で発生する大きな手戻りの可能性を払拭しておくことは非常に重要な業務だと言えます。
具体的な納まり検討のポイントについては後ほど詳しく説明していくことにして、ここでは鉄筋についての概要を掴んでおくところまでの説明で終わることにします。