前回は鉄筋納まりの大きなポイントである「かぶり」について考えてみました。
納まりを検討する際には、まずはかぶりを確保することを前提にして検討を進める事になりますが、かぶりはそれくらい重要な要素なんです。
今回は引き続き鉄筋納まりの重要な要素についての説明をしていく事にして、「定着」という考え方を取り上げてみたいと思います。
かぶりという要素の重要ではありますが、今回紹介する「定着」という考え方は、構造体として絶対に守るべき要素になります。
結局はどちらも守る必要があるのですが、納まりの検討としては定着の方が複雑な要素になるはずなので、まずはここで考え方を覚えておく事にしましょう。
鉄筋コンクリート造の構造体として柱や梁があって、構造体の中には当然鉄筋とコンクリートが組み合わされている事になります。
ただ、構造体だからと言って主筋とフープ、あるいは主筋とスターラップが配置されていればOKという単純な話ではありません。
例えば梁の場合、いくら適切に主筋とスターラップが配置されていたとしても、それが取り合っている柱につながっていなければ全然意味がありません。
コンクリートは繋がっているのですが、鉄筋が繋がっているかどうか、最終的に見えなくなってしまう部分がどう納まっているのか、という話です。
こうした考え方は以下の図面を見て頂ければすぐに分かると思います。
ちょっと極端な例ではありますが、柱は柱の鉄筋、梁は梁の鉄筋でそれぞれ完結していて、それぞれの部材が鉄筋では繋がっていない状態です。
梁にせっかく主筋とスターラップが配置されていたとしても、それがしっかりと柱と接続されていなければ、梁にかかる荷重を柱に伝達することは出来ません。
上図のような状況になっていたとしたら、恐らくその梁に荷重がかかった時に柱から梁が脱落してしまうことは間違いないと思います。
これではコンクリートを鉄筋で補強しても効果がなく、せっかくの鉄筋コンクリート造が台無しになってしまいます。
こうなってしまったら、いくら鉄筋のかぶりを適切な数値に保っていても意味がありません。
鉄筋が錆びてしまうとかいう話の前に、構造体である柱から梁が脱落してしまうことになるので、鉄筋が錆びる前にもっと大きな問題が発生するはずです。
もちろんそんな建物は怖くて利用出来ませんので、そうならない為に構造設計ではきちんと柱と梁をつなげておくよう細かい規定を設けています。
柱と大梁、大梁と小梁、梁とスラブ、柱と壁、梁と壁など、組み合わせは色々とありますが、それぞれの構造体をしっかりとつなげておく事。
これが鉄筋の「定着」の基本的な考え方になります。
これを守ってはじめて鉄筋コンクリート造の構造体と呼ぶことが出来るんです。
梁の主筋が柱に入り込んで固定されている、という考え方を「定着」と呼び、梁の主筋がどのくらい柱の中に入っているかの寸法を「定着長さ」と呼びます。
この「定着長さ」というのは、鉄筋のかぶり寸法と同様に、鉄筋を施工する際の最重要項目として管理される数値になります。
構造体の壁であれば取り合う柱や梁に、梁であれば取り合う柱や梁に、柱であれば柱の足元に存在する基礎や地中梁にそれぞれつながっている必要があります。
「つながっている」というのは単純にコンクリートが連続しているという意味ではなく、鉄筋がきちんと定着されているという意味です。
そうなって初めて、鉄筋コンクリート造の建物は、建物にかかる荷重をきちんと建物の基礎に伝達する事が出来る、という事になります。