もうかなり昔の話になってしまいますが、図面をすべて人の手で描いて、修正も消しゴムを使って消してからまた描いていた時代がありました。
当時はそれが当たり前の話だった訳ですけれど、時代は変わるもので、今現在はCADを使って図面を作図することが普通という状況になってきています。
いくら手描きのスキルが高くても、今の時代に図面を作図する仕事をする為にはCADのスキルが必要不可欠、という条件になりつつあります。
誰よりも手描きのスピードが速くて、しかも完成した図面が非常に美しい仕上がりである、というようなスキルを持っている方にとっては、厳しい現実ではありますが…
世の中の流れにあわせて仕事のスキルを更新していく必要があるのはどの業界でも同じですから、興味を持ってCADに接していくことをお勧めします。
図面を作図するツールが手描きからCADになったとは言っても、手描きのスキルが完全に不要になってしまった訳ではありませんから。
それに、今は図面を描く為のツールとして重宝されているCADであっても、将来何十年にも渡って安泰とは誰も言えないはずです。
この先CADよりもさらに便利なツールが開発された場合は、あっという間にCADからそのツールへと乗り換えられることになります。
技術の進歩というのはそういうものです。
とは言っても、少なくとも今現在使われているCADから、昔の手法である手描きに戻ってしまうようなことは恐らくもうないでしょう。
それが良い事なのか、そうでもないことなのかは正直なところ分かりません。
そうした問いに対して、誰もが納得するような明確な答えを私は持っていませんが、少しでも便利なツールを使っていくというのは仕事の流れとして自然なことだとは思います。
CADというツールは便利な機能をたくさんもっている、非常に優秀なツールである事は間違いありませんが、だからと言って完璧なツールである訳ではありません。
今まで何度か話題に上りましたが、機能が多くて便利な分だけ色々細かい設定などが必要になり、最初に使ってみるまでに色々覚えなければならない事も多いです。
これははじめてCADに触れる方にとって、ちょっとしたハードルであることは間違いありません。
こうした特徴があるので、手描きに慣れ親しんでいた方の中には、CADというツールに対してあまり良い感情を持っていない場合もあるかも知れません。
手描きの時代に仕事をたくさんこなしてきた方で、特に手描きのスキルが高い方は手描きに愛着があるはずで、なおさらCADに対するイメージが良くないと思います。
こうした気持ちはとてもよく分かります。
自分が得意とするやり方から時代が変わってしまうと、どうしても新しいやり方を覚える必要に迫られることになる訳ですけど、それに対するもどかしさは絶対にありますよね。
手描きのプロフェッショナルであるからこそ、CADというツールの悪い部分にどうしても目がいってしまう、ということもあるでしょう。
今まで仕事をしてきた中で、CADに対してあまり良くない感情を持っていないと感じる方を何人も見てきましたし「もったいないな…」と思った事もたくさんありました。
手描きが出来るのであればCADだって問題なく出来るはずなのに、気持ちが新しいツールを拒絶してしまう、というのは見ていてもどかしいものです。
そうした「CADというツールは不便で仕方がない」という考え方が間違っているとか、どうせ仕事で使うのだからその考え方を改めた方が良いとか。
そうした偉そうなことを言える立場に私はいませんが、せめてここでは「CADも結構便利なツールなんですよ」という事を控えめに主張してみたいと思っています。