構造図を構成する図面として前回は床伏図を紹介しました。
床伏図には各階の構造的な基本情報として、柱の配置及び仕様、大梁小梁の配置や仕様、床の仕様やレベルなどが記載されています。
細かい納まりやそれぞれの仕様についてはなかなか表現しきれない部分もありますが、１フロアの構造方針が記載されている事に違いはありません。
なので、意匠図における平面図と同様に、構造図を構成する図面の中で床伏図は最も重要な図面になってきます。
今回はそんな床伏図と対をなす図面として、軸組図（じくぐみず）を紹介したいと思います。
軸組図というのは意匠図における断面図と似たような考え方の図面になります。
つまり軸組図とは建物の構造体を平面方向ではなかう高さ方向に表現した図面、という事になるのですが、断面図とは少し違った考え方の図面でもあります。
意匠図の断面図は仕上情報を分かりやすく表現する為、柱や大梁がある位置で断面図を表現することはあまりありません。
切断線に直交してくる梁は断面線として表現されることになりますが、柱などは基本的に「見えてくる線」として下図のように表現される事になります。
こうした表現方法は、仕上の関係を重点的に表現するにはどうすれば良いか、という事を考えると自然に到達する方法ではないかと思います。
一方の軸組図ですが、構造図として表現したいのは仕上情報ではなく、あくまでも柱や梁などの構造体になる、という違いがまずはあります。
表現したい部分が違っているのに同じ考え方で構造体を表現すると、あまり上手く構造体が表現されません。
これでは情報としてよく分からない感じになってしまうので、軸組図では通り芯で建物を切断した場合の断面図を表現する事になります。
もちろん例外はありますが、通り芯には基本的に柱が配置されていて、柱と柱の間には大梁が配置される場合がほとんどです。
柱と梁の関係を各通り芯ごとに断面図として表現して、仕上関連のラインは省略してあくまでも構造体だけを表現していく。
これが軸組図という図面になります。
柱は上階になるほど小さくなっていく場合もあるので、そのあたりも簡単に軸組図で表現していく事になります。
とは言っても、軸組図は建物全体を断面図として表現していくので、あまり細かい部分を表現することは難しいという現実もあります。
そうした細かい部分の納まりではなくて、軸組図で表現していくのはもう少し大きな部分の方針で、以下のような部分になります。
・柱符号
・梁符号
・梁のレベル
・柱や梁のジョイント（鉄骨造の場合）
上記のような情報を軸組図では表現することになります。
これらの情報は床伏図にも表現される事になるので、結局床伏図と似たような情報を表現するのではないか、と思う方もいるかも知れません。
確かにその通りで、床伏図と軸組図はほぼ同じような情報を表現する事になるので、それぞれの情報はお互いにリンクしている必要があります。
ただ、平面図と断面図では同じ情報を表現していても、視覚的に見えるかどうかという決定的な違いがあるのもまた事実です。
なので、床伏図と軸組図の情報をリンクさせながらどちらの図面もまとめていく、というのが構造図としてはやはり必要になってくるんです。
そんな軸組図のイメージはこんな感じになります。
構造体だけが表現されるので、割とシンプルな図面になりますが、高さ方向の情報を視覚的に確認出来るというのは結構効果があるものです。
階段の納まりでフロアの中間に梁が配置されている場合も時にはあります。
その場合床伏図では単純に文字情報でそれを表現するしかありませんが、軸組図では実際に二段になっている梁を図面として表現することが出来るというメリットが。
高さ情報を実際の図面にしてみると色々見えてくるものがある、というのは意匠図でも構造図でも同じで、建物の情報としては非常に重要なものになります。
なので、軸組図は各通り芯ごとに全て作図することになるのが一般的です。
