構造設計者は基本的に、建物が自らにかかる様々な力に対して耐えられるように、という事を基本事項として建物の設計をしていきます。
その為の大前提としてあるのが「建物が地面の上にしっかりと建っている事」です。
これはもう当たり前過ぎる条件なんですけど、この前提が崩れてしまうと建物としてはかなり大変な事になってしまいます。
建物にとっての当たり前を実現するのは決して簡単な事ではないので、構造設計者はまずこの基本的な条件を守る為に色々な検討をしていきます。
その際に利用されるのが、今回紹介する柱状図(ちゅうじょうず)です。
柱状図というのは、これから建物を建てようとしている部分の地盤がどのような状況になっているかを調査した結果を図面にしたもの。
図面というよりもむしろ地盤調査結果そのものという感じの情報になっています。
上図が地盤調査した箇所の資料になりますが、ぱっと見ではなかなかよく分からない状況になっているかと思います。
しかしこの情報は建物の構造を決定するにあたって、非常に重要な要素となってくるので、じっくりと見ていく必要があるんです。
なぜそうした地盤の調査をするのかというと、単純な話で、建物はある程度硬い地盤の上に乗っていないと倒れてしまうから。
ちょっと極端な例になってしまいますが、砂漠の上に直接高い建物を建てる事を考えると、何となくイメージが出来るのはないかと思います。
砂というのは細かい粒がたくさん敷き詰められている状態なので、地盤としては非常に流動的な状態になっているかと思います。
その上に重量のある建物を直接乗せた場合、砂では建物の重量を受け止めることは出来ないので、少しずつ建物は沈下していくはず。
このような状況になってしまうと、建物は水平を保つ事すら出来なくなるので、建物として求められる基本的な性能を満たすことが難しくなってしまいます。
もう少し簡単に言ってしまうと、その建物は傾いて使えなくなる、という事に。
それではせっかく建てる建物が勿体ないので、きちんとした地盤の上に建物を建てていく、というのが基本的な考え方になってきます。
ただ、建物を建てようとしている敷地というのはもうすでに決まっている訳で、地盤の条件があまり良くないからと言って「別の敷地に建てるか…」となるのは難しいものがあります。
その敷地がどのような地盤条件になっているかは既に決まっているもの。
なので、まずはその条件をしっかりと調査して、地盤条件にマッチした基礎の構造を計画していく、という流れになってくる訳です。
その為に必要なのが柱状図で、地盤調査によって敷地内の硬い地盤がどのレベルに存在するかを調べていくのがその目的になります。
硬い地盤が深い場所にある場合には、その深さまで到達するような構造を検討していき、建物の重量をその硬い地盤にかけていく事を計画します。
上図はあくまでも単純な例になりますが、左の図面が硬い地盤が割と浅い場合の考え方で、固い地盤が地中深くにある場合は右の図面のような考え方になります。
こうして地中深くにある硬い地盤に建物の荷重を届かせる為には、杭と呼ばれる構造が必要になってくるのですが、そのあたりは次回に詳しく説明をします。
まずは柱状図で敷地内の各所を調査して、建物の荷重をかけるのに適した固い地盤がどの深さにあるのかを表現していく。
その結果を踏まえて建物の基礎構造を決めていく事になりますが、こうした調査をしない限りはその検討には進むことが出来ません。
柱状図自体で何か建物についての表現をする事はありませんが、建物の足元情報を調査した貴重な資料という事になります。
それを踏まえて建物の構造が決められる訳ですから、構造図として非常に重要な要素である事は間違いありません。