前回は構造図を構成する図面として、柱状図という図面を紹介しました。
建物を建てる予定の敷地がどのような地盤になっているのか、というあたりを調査した結果を表現する柱状図は非常に重要な図面だと言えるでしょう。
建物の構造体は鉄筋コンクリートあるいは鉄骨で構成されていて、巨大な建物を支える部材になるので当然ですが、非常に重量があるものです。
50cm×50cm×50cmの立方体で計算すると、鉄の場合は約980kgで、コンクリートの場合は約260kg程度の重量があります。
鉄筋コンクリートになると部分的に鉄が入るからもう少し重量としては重くなると思いますが、とにかく建物の重量というのは非常に重いものなんです。
そのような重い建物を柔らかい地盤の上に建ててしまうと、当然の結果として、地盤が耐えられなくて下がっていき建物は傾きます。
もちろんそのような建物では利用することが出来ないので、建物にかかる荷重を受け止めることが出来る地盤の上に建物を載せる必要があります。
建物の荷重を受け止めることが出来る地盤を「支持層」と呼びます。
支持層に値する地盤かどうかという判断は「N値」と呼ばれる数値で判断することになり、N値が50以上の地盤を支持層として考えることが出来ます。
N値というのは、簡単に言うと地面にハンマーでロッドを打ち込んでいき、30cm打ち込む為に何回ハンマーを打ったか、と言う数値になります。
ロッドやハンマーの仕様はともかくとして、30cmロッドを打ち込む為に50回以上かかる地盤というのは、なかなか硬い地盤だという事になりますよね。
そうした硬い地盤に建物の荷重をかけていく事になる訳ですが、その地盤が深いレベルにあったとしたら、そこまでどのように建物の荷重を届かせるのか。
そうした問題に応える為の構造体を杭と呼びます。
建物の最下部と支持層との間に大きな距離がある場合には、その地面を全て掘っていくことはあまり現実的ではありません。
建物の基礎から支持層までを最低限の構造体で繋いでいく事が出来れば、建物の下を全部掘っていく必要はなくなる訳で、その為に杭があるという感じです。
建物の基礎と支持層を繋げる構造体を杭と呼び、その杭の配置や仕様を表現していく為の図面が杭伏図という事になります。
前回も概要を説明するために断面図を紹介しましたが、杭とはこのような部分に配置されるもので、当然最終的には見えなくなってしまう存在です。
昔の言葉になるのかも知れませんが「縁の下の力持ち」という言葉があります。
建物の荷重を支えるという重要な役割を持っていて、なおかつ人の目には届かない位置にあるという事で、杭というのはまさにそのような存在ではないかと思います。
杭が支持層に届いていないと、建物の荷重が支持層に伝達されることがないので、結局柔らかい地盤の上に建物を建てる状態になってしまいます。
それでは建物が傾いてしまう懸念があるので、きちんと支持層まで杭が到達していることを確認しながら建物を造っていく事に。
とは言ってもそれは施工者が管理する項目で、柱状図によって分かる支持層の深さと建物の基礎との距離を考えて、適切な杭の仕様を決める事が構造設計者の役割になります。
杭とひとくくりに表現していますが、実際に杭というのは様々な仕様があるもので、そうした色々な選択肢の中から適切なものを選択していく事になる訳です。
非常に地味な図面ではありますが、建物のまさに根幹となるものなので、慎重な判断が必要な図面だと言うことは間違いありません。