前回までの説明では、意匠図を構成する図面の種類と、その図面がどのような役割を果たしていくのかについて色々説明をしてきました。
結構たくさんの図面が意匠図にはありますが、建物の方針を示す為の図面ですから、やはりある程度の情報量が必要になってくるものです。
まずは建物の基本的な方針を定めて基本設計図をまとめ、その後少しずつ図面を足していきながら建物の概要を肉付けしていく。
これだけでもかなり大変な業務になるものですが、意匠設計者は意匠図だけを気にするだけではなく、それぞれの設計との整合も意識していく必要があります。
全ての情報が整理された設計図というのはなかなか難しいというか、そこまで突き詰めていく事は難しいものですが…
それでも、ある程度の情報を整合させた設計図をまとめる為に、構造設計や設備設計と連携をとって検討を進めていく必要があります。
意匠図については一通り説明が終わったので、今回は意匠図と連携をとっていく必要性の高い構造図について紹介をしていこうと思います。
以前も紹介したと思いますが、構造図というのは建物の骨組みである構造体をどのように構築していくかを示す設計図です。
建物の構造は幾つかのパターンがあって、それぞれの建物に適した構造が構造設計者によって検討されていく事になりますが…
大抵の建物では、構造体というのは鉄筋コンクリートもしくは鉄骨という事になるかと思います。
意匠図が建物の形状についての方針を示した設計図であるのに対し、構造図は建物の柱や梁などの構造体についての方針を示している、という感じですね。
柱を鉄筋コンクリートで構成していき、その仕様はどのようなものなのか、あるいは梁を鉄骨で構成していき、その仕様がどのようなものなのか。
こうした情報を示していくのが構造図の役割になります。
鉄筋コンクリートや鉄骨の仕様って何? と思われる方がいるかも知れませんが、ぱっと見では分かりにくいこうした仕様は結構選択肢の巾が広いものなんです。
その仕様の違いによって構造体の強度も大きく変わってくる事になるので、そのあたりの細かい仕様などを煮詰めていくのが構造設計者という事になります。
建物は設計された後に施工が進み、実際に完成するという流れで出来上がっていく訳ですが、建物は建っている間ずっと様々な力に晒されることになります。
その力は長期的にかかる力だったり、あるいは瞬間的にかかる力だったりと色々ですが、色々なパターンで力がかかる事は間違いありません。
長期的な力としては、建物自身の荷重が常にかかることや、建物内に配置する家具や什器の重量、あるいは建物利用者の重量などがあります。
短期的な力としては、地震の際にかかる荷重であったり、台風が通過する際にかかる瞬間的な風圧であったりと、なかなか強い力がかかったりします。
長期的な力でも短期的な力でも、結局建物というのは自分自身にかかる様々な力に対して耐える力を持っている必要がある訳です。
その為に色々検討していくのが構造設計者であり、その結果を図面として纏めたのが構造図という事になります。
地震が発生した際に建物は倒れない。
こうした性能は建物としてぜひとも厳守して欲しい性能になると思いますが、そうした要望を守る為には様々な検討が必要なんです。
中でたくさんの人が生活をしたり仕事をすることになりますから、建物が倒壊しない為の検討というのは人命に関わる非常に重要な要素ですよね。
構造図というのはそうした重要な役割を果たすことになります。
そうした重要な要素である構造図には、やはり色々な情報を掲載する必要があるので、図面の種類としては結構なバリエーションがあって…
というあたりの話については次回に続く事にします。