施工図の種類として「躯体図」と「仕上図」と「外構図」があって、それぞれ設計図をベースにして細かい検討を進めていく事になる。
というような話を今まで説明してきて、施工図の大まかな区分と役割については大体説明が終わったかな…というところまで話が進んできました。
なので今回からは、設計図と施工図のどちらでもないちょっと特殊な図面として「総合図」という図面について考えてみる事にしようかと思います。
まずは「総合図とはどのような図面なのか」という部分から考えてみる事にしましょう。
総合図というのは、建物の平面図・天井伏図・展開図などの建築で作図した施工図に、電気や設備などの器具情報を重ねて盛り込んだ図面を指します。
建築情報だけではなく設備的な情報も重ね合わせた図面は総合的な情報が盛り込まれているという事で、総合図という呼び方をするのだと思います。
設計図でも施工図でも同じなのですが、平面図を見ただけでは単純に建築の情報、つまり部屋の配置や壁の位置、そしてドアの位置などが分かるだけなんです。
そこには設備的な情報、つまりはコンセントの位置や照明スイッチの位置、空調スイッチの位置などの情報がどこにも記載されていません。
建築の設計図や施工図に設備的な情報が記載されていないのは、図面の種類や用途などを考えると当たり前の話ではあるのですが…
これはあくまでも建物を造っていく側の視点で、実際に建物を造っていく際には建築だけの情報がある程度充分だったりします。
しかし、実際に建物を利用する側の立場から考えていくと、建物のプランを確認するだけで充分と言う訳にはいきません。
コンセントがどこにあるのかとか、照明や空調機のスイッチをどこに配置していくのか、という設備的な情報がかなり重要になってきます。
これは自分の家で想像すると何となく分かってくるのではないかと思いますが、こうした設備的な情報を盛り込むのが総合図という事です。
建築関連の図面に設備関連の位置情報を重ねた図面ですから、総合図で主に表現されるのは、やはり建築ではなく設備に関する情報ということになってきます。
ただ、設備に関する情報とは言っても、総合図では天井裏の配管やダクトやケーブルラックなどを表現することはありません。
総合図ではあくまでも、壁や天井の表面に見えてくる器具などを表現していく事になります。
天井裏や壁の裏では配管などが複雑に入り組んでいたとしても、総合図で表現されるのは照明器具やスイッチやコンセントなど、建物を使う人の目に触れるものだけ。
天井に取付く器具は色々あるので、天井についてはそれなりのボリュームになりますが、配管やダクトの施工図に比べると、総合図は図面として結構シンプルな感じになります。
ここで総合図の一例を出してみると、こんな感じの図面が総合図になります。
事務室という部屋があって、その入口付近に照明のスイッチとコンセントがあり、反対側の壁にもコンセントがある、ということをこの図面で読み取ることが出来ます。
これから自分が住む家を建てようとしている、という事を想像してみると、この総合図の重要性がかなり具体的に分かってくると思います。
自分がパソコンを配置しようとしている場所にコンセントやLANケーブルのジャックがないと、離れたところから線を引っ張って来ることになって不便ですよね。
また、冷蔵庫を置きたい部分のコンセントは通常高い位置に配置するものですが、それが考えられていない場合、冷蔵庫を配置した後で電源を差し込むことが出来なくなります。
もちろんこうしたミスは建築のプロとしてあり得ませんが…
そのあたりの話を「建築の常識」という話で済ませてしまうと、どこかで間違えてしまう可能性がどうしても残ってしまうものです。
そうした単純で深刻な間違いをなくす為にも、設備系の機器が配置される図面として総合図は非常に重要な図面という事になってくる訳です。