意匠図を構成する図面にはそれぞれ様々な役割があります。
もう少しパソコンやソフトなどの技術が進歩したら、データ上に様々な情報を盛り込んだ3Dモデリングで建物を表現する事が出来るようになるかも知れません。
そのデータをソフト上で誰もが簡単に閲覧出来るようになっていて、気になるところをすぐに抜き出して詳細を表示できるとか。
そうなると紙は不要になるのですが、いまのところはそこまでの技術が整っていないので、CADというソフトで作成した図面を紙に印刷して使っています。
そのうちにPDFで図面の内容を確認することが多くなって、その時が来たら紙媒体はようやくその役割を終えるはずですが…
そこまでになるにはまだ時間がかかりそうです。
なので、今のところ意匠図は様々な種類の図面で建物について表現していく事になっています。
平面図には建物全体のプランを示す役割があって、立面図には建物の外観をどのようにするかを示す役割があって、断面図には建物の高さ方向の情報を示す役割がある。
建具キープランと建具表には建物内に配置する建具の基本方針を示す役割があって、建具詳細図にはその建具を具体的にどのように納めるのかを示す役割が…
という感じで、図面を見て建物の内容を知ろうとしている人に対して、建物に関する何らかの情報を提供する為に意匠図は作成されます。
出来るだけ情報の量と質を高める為に、色々な角度から建物を表現していく事になって、最終的にその枚数はかなりのボリュームになっていく、という感じです。
今回紹介する部分詳細図も、意匠図を構成する数多くの図面のひとつで、特に各所の納まりを細かく説明していく為に作図されます。
建物を部分的に拡大していき詳細を表現する図面と言うことで「部分詳細図」という名称になっているので、やはり読んだままですね。
建物について細かい部分について「このようにしたい」という意図を表現する為には、この部分詳細図という図面は欠かす事が出来ない図面なんです。
前回紹介した建具詳細図は、建具キープランと建具表によって表現した建具の位置と仕様を踏まえて、さらに詳しい情報を盛り込む為の図面でした。
ちょっと乱暴な説明をしてしまうと、今回紹介する部分詳細図という図面は、建具詳細図の建具以外バージョンという感じだと言えるでしょう。
建物のプランや高さ情報などは平面図や断面図などの図面で表現される事になり、もう少し詳しい平面情報を平面詳細図によって表現していく。
こうした話は前回までの説明でも取り上げましたが、もっと細かい部分について表現したい場合には、平面詳細図であってもなかなか表現しきれるものではありません。
そうなると、例えば平面詳細図に詳細図符号的なものを記載しておき、その部分の詳細を部分詳細図によって表現していく、というようなやり方が必要になってきます。
今回紹介している部分詳細図の存在意義はこのあたりにあります。
もちろん、色々な図面に情報を分散してしまうと分かりにくいので、平面詳細図上で部分的に拡大図を添付するというやり方をとることも出来ます。
そうすると1枚の図面によって平面情報を表現して、なおかつ部分的な詳細も表現出来るというメリットがあるのですが、メリットばかりではないんです。
色々な情報を1枚の図面に集約すると、かなり図面が見づらくなってしまうというデメリットもあるので、そのあたりが難しいところです。
1枚の図面に情報を盛り込もうとすると、盛り込むことが出来る情報の量には限界があるので、別の図面で詳細図を色々と用意していく方が良いかも。
そうした考え方で部分詳細図は作図されています。
この考え方がベストなのかどうかは分かりませんが、今のところこの方式以上のやり方はそれほど多くないと考えられています。
だから大抵の意匠図ではこうして部分詳細図という図面が存在することになる訳です。