前回紹介した平面詳細図は、平面図では表現しきれない情報をある程度拡大した図面で表現していくという目的で作図される図面になります。
平面詳細図は縮尺をある程度大きくして平面を表現する図面なので、建物の1フロアを1枚の図面で全て表現することは出来なくなります。
しかしそれでも部分的に拡大して細かい表現をすることが可能になるというメリットは、結構大きいものがあります。
ただ、こうした平面詳細図は建物の全ての部分で作図をする訳ではなく、細かい部分について表現したい場所で作図する場合が多いです。
全ての場所で平面詳細図を作成する方が、より詳しく建物についての表現をする事が出来る、というのは間違いないのですが…
そうすると図面の枚数が非常に多くなってしまい、前回も少し書きましたが、プラン変更になった場合の整合性が取りにくくなってしまうという問題があります。
そうした事情があるので、細かい表現をしたい部分を厳選して平面詳細図を作図して、その範囲から漏れてしまう部分が出る場合も結構多くあります。
そうは言っても、部屋の用途によっては詳細図で表現しておいた方が良い部屋というのは確かにあるものです。
それが今回紹介する各室詳細図という事になります。
各室詳細図というからには、特定の部屋にフォーカスして1枚の図面として表現していく事になる訳ですが…
どのような部屋でも詳細図が必要になる訳ではなく、ある程度の条件を満たした部屋を詳細図として作図していく事になります。
それがどのような条件なのかというと…
・壁面に色々なものが取り付く部屋(例:トイレなど)
・水廻りなど各種取り合いが多い部屋(例:浴室など)
・同じ部屋が多く基準図が必要になる場合(例:ホテルの客室・マンションの住戸・病院の病室)
・建物のメインとなる部屋(例:風除室・エントランスホールなど)
というような部屋については、意匠的に色々な意図があってそれを表現していく為に、各室詳細図という形で詳細図を作成していく事になります。
もちろんこうした部屋は詳細図を作成しなければならない、という決まりはありませんが、部屋をどのように見せたいのかを考えた時には詳細図があった方が話が早いです。
こうした各室詳細図では、ある程度縮尺を大きくした平面図に加えて、各面の展開図も作成していく事になります。
展開図によって各面の壁面を表現していくことによって、壁面にどのようなものが取り付けられるかなどを説明していくことが可能に。
これが各室詳細図を作図する主旨になります。
他にも、断面図をある程度拡大して表現してみることも可能なので、細かい部分をどのように見せたいのかを説明するには非常に有効な図面だと言えるでしょう。
このように、それぞれの部屋をある程度細かく表現していく事によって、建物の内容は少しずつ明確になっていきます。
図面の整合性を取っていくのが少しずつ難しくはなってきますが、建物をどのように造っていくかを説明する設計図としては、ある程度こうした詳細図が必要になります。
さすがに平面図と仕上表だけでは全ての情報を盛り込む事が出来ないので、色々な図面を使って大まかな方針から細かい部分までを表現していく、という感じです。
細かい納まりについては施工者が施工図として詳細図を作成することになるので、そこで改めて施工者との調整をすることにはなります。
とは言え、設計者としての意図を正確に伝達する為には、やはり意匠図でも各室詳細図を積極的に作図していく方が良いと思います。