建物を設計していく段階で、構造設計・電気設計・空調設計・衛生設計がどのような仕事をしていき、それぞれがどのように絡んでいくのか。
というあたりの話を前回までの説明で取り上げてきました。
構造体や各種設備という要素は、建物を構成する要素としてどうしても欠かす事が出来ないもので、その設計は非常に重要なものだと言えます。
それと同じくらい重要な要素として意匠設計がある、という事で、今回からは意匠設計の業務について色々と考えてみたいと思います。
意匠設計が検討していく内容を大雑把なくくりで表現してみると、建物の形状を検討するというようなイメージになってきます。
建物の形状というのは何もデザイン的なものだけではなく、もっと全般的な部分を含んでいるので、意匠設計の役割はかなり広範囲になります。
例えば各階の平面プランをどのように計画していくのか、という部分も意匠設計が検討・調整していく事になります。
そうしたプランによってどこに水廻りが必要になってきて、コンセントがどこに欲しくて、この部屋には空調が必要になるなど、様々な要素に影響を与えることになる訳です。
このような絡みがあるので、意匠設計と各種設備設計との調整はどうしても必要になってくる、という事が分かってくると思います。
もちろん構造設計との絡みもあります。
構造設計が検討する「建物が構造的に成り立っているか」という話は建物としての前提条件になりますから、それを前提として、使い勝手の良い室内プランを検討していく事になります。
このあたりは意匠設計と構造設計との調整によって、建物の見た目が良くなる事もあるし、調整が足りなくて今ひとつの場合もあるでしょう。
建物の見た目とか使い勝手を色々考えていくと、柱や梁などの構造体をなるべく目立たないようにしたくなってくるものです。
もちろんそれは状況によって少しずつ違ってくるものですが、壁面が凸凹しているよりも、フラットに納まっている方がスッキリ見えるのは間違いありません。
そうして建物のプランを検討していく中で、この部分は意匠的に力を入れたい、というような場所が色々と出てくる事になるはず。
例えば建物のメインとなる出入口まわりなどは、多くの方がその建物に入る際に目にする部分ですから、やはり見映えを気にしておきたいところです。
建物に入った際には上部が吹抜けているとか、仕上材に石を使ったりするなど、デザインとしては色々な事が考えられます。
上階の床をなくして吹き抜けをつくる等はよく使うやり方ですが、よく使われるだけあって吹き抜けは開放感があって非常に良い感じに仕上がります。
このように「意匠的にここは吹き抜けにしたい」という場所がある場合には、意匠設計と構造設計とで調整をしていき、床と梁をなくしていく検討を進める事になります。
後から吹抜けを設けるのは難しいものがありますが、設計段階から吹き抜けを計画しておけば、構造体としては問題なく処理することが可能なんです。
吹き抜け以外の部分でも、例えば空間として大きく使いたいから柱を少しずらしたいとか、天井高を大きく取りたいから上階の床と梁レベルを上げるなど…
意匠設計が計画していく建物の形状にあわせて、可能な限り構造設計が条件を満たした構造体を検討していく、という場合が結構多いかも知れません。
こうして建物の平面プランや意匠的にどう見せるかなどの計画を進めていき、それに合わせて構造設計や設備設計などと調整しながら建物の設計を進めていくのが意匠設計の役割になります。
一般的な話になりますが、建物の設計というとそれは自動的に意匠設計だと思われてしまう、というくらいに意匠設計はよく知られた職種ではないかと思います。