前回までの話で、構造設計や各所設備設計についての概要と、どのような業務なのかについて説明をすることが出来ました。
このような感じで建物は様々な要素について計画と検討調整を繰り返して、それを実際の設計図に反映していくことで少しずつ進んでいきます。
構造体や電気設備や空調設備、そして衛生設備など、建物として絶対に必要となる機能的な部分がまずはきちんと検討されていること。
これが建物の前提条件ということになり、その条件を全て満たした上で使い勝手の良いプランや優れたデザインなどを検討することが出来ます。
優先順位としてはそのような順番になるかと思います。
こうした様々な要素を総合的に検討しながら建物を計画していく業務を設計と呼び、スムーズに設計を進める為には色々な絡みを検討・調整していくことが必要になります。
建物についての色々な検討を進める為には、検討する側が建築・設備・構造など様々な分野の知識を持っている必要があります。
ちょっと簡単に書いてしまいましたが、様々な分野についての知識を持つという事は、それ程簡単な事ではありません。
その為には勉強と経験が必要になってくるはずで、なかなかに奥が深い仕事だと言えるのではないかと思います。
構造設計が建物に必要なフレームを検討して、その中で意匠設計者が建物のデザインを細かく検討していき、建物を快適に使えるための設備との調整を進めていく。
そんな感じで建物を建てるプロジェクトの設計業務は進んでいく事になり、その中でどれが欠けたとしても満足される建物は完成しません。
建物を人の体で例えると、構造設計は骨組み、意匠設計は筋肉、設備設計は血液という感じになるのではないかと勝手に思っています。
いくら骨格が頑丈でも血液が流れていないとダメですし、筋肉が発達して血液がきちんと流れていたとしても、骨が貧弱であれば人は体を維持することが出来ません。
まあ少々極端なたとえではありますが…
建物の場合でも同じような話が言えます。
構造設計で骨組みをしっかり検討して、意匠設計で使い勝手の良いプランと優れたデザインを両立させたとしても、それだけでは単に巨大なコンクリートの箱を造っているだけなんです。
それでは建物としては機能しているとは言い難いですよね。
人の体には当たり前のように血液が流れているのと同じで、建物の中には様々な種類の設備が計画されている必要がある、ということです。
建物の中に様々な設備を組み込んでいくことで、ようやく建物を利用する人が便利に使える建物として機能するようになる訳です。
こうした話は割と一般的な話ですから、わざわざ人体に例えて説明をしなくても、皆さんご存じだとは思いますが、ここではあえて設備の重要性を欠かせてもらいました。
建物の中で設備がどれくらい重要なポジションを占めているのかは、今自分が住んでいる家のことを考えればすぐに分かるのではないかと思います。
あまり良い例ではありませんが、夜になっても照明がつかない家、コンセントが家中を探しても見つからない家、エアコンが設置されていない家、水やお湯が出ない家などなど。
この中でどれかひとつでも該当するものがあったら、おそらく生活していくには非常にに不便でどうしようもない状態になってしまうでしょう。
電気も空調も水も、我々が生活をしていく上で必要不可欠なものばかりで、使うことが出来て当たり前という存在になっています。
しかしそうした認識が成り立つのも、電気・空調・衛生それぞれの設計者がきちんと検討しながら設計をしているからなんです。