建物を設計していく段階で意匠設計者がどのような業務をおこなっていくのか、というあたりの話を前回は紹介してみました。
建物のデザイン的な部分にプラスして、各階の部屋割りをどのように考えるのかなど、その建物の形状について検討を進めるのが意匠設計者の役割という話でした。
意匠設計は構造設計や各種設備設計などの業務とも密接に絡んでくる、というのは確かに事実ではありますが、表現としては完全とは言えないかも知れません。
意匠設計は建物の見た目やプラン以外にも、構造や設備などそれぞれの設計内容を最終的に取りまとめる役割も担っている、という感じです。
今回は引き続き意匠設計者の業務をテーマにして、意匠設計者がどのような基準を元にして検討をしていくのかを考えてみることにします。
まずは、施主の要望にあわせた建物を設計していく事が意匠設計者の役割という話になる訳ですが、もちろんそれだけで済んでしまうほど意匠設計は簡単な業務ではありません。
単純な建物のデザイン的な部分以外にも、建物としてきちんと押さえておかなければならない項目は色々とあります。
その中のひとつが法的な部分の検証です。
建物を設計する際には、プランやデザインの善し悪しという要素も確かにありますが、それ以前の問題として、建築基準法をはじめとする各種法規を満たしている必要があります。
法的な要望を満たしている建物になっているか、という確認を行いながら設計を進める事も、意匠設計者の業務のひとつだといえます。
建築基準法を読んでみるとよく分かりますが、内容はなかなか回りくどい表現をしている場合が多く、解釈が難しい事も結構出てくることに。
そうした場合には、建築指導課に確認をしながら設計を進めるなど、設計している建物が法的に問題がないかを確認していく必要があります。
建物を建てようとしている敷地がどのような場所にあるのかによって、法的な縛りは少しづつ変わってくる事になります。
そうした違いをきちんと把握しておき、その条件を守りながら建物の形状を色々と調整して設計を進めていく、という感じですね。
もちろん建物の見た目などにも気を配っていく必要も。
このように、意匠設計者の業務は非常に色々とある訳ですけれど、これらの項目を簡単にまとめてみると以下のような感じになるかと思います。
・施主の要望を満たすプランを作成し
・法規を満たすかを確認しながら
・構造および設備との調整をおこない
・見映えが良い建物を検討する
というあたりになるかと思います。
かなりサラッと書いてしまいましたが、これらの条件を満たすのはなかなか難しいというか、実現する事が大変な条件になっています。
上記のいずれかだけを満たす計画、例えばプランを練りに練って非常に使いやすく計画することだけであれば、おそらく意匠設計の仕事をしていない方でも出来ると思います。
特に、実際にその建物を利用される方が考えるプランというのは、当たり前ですが使う側の視線で検討されますので、使い勝手が良いことが多いですから。
しかしその状態では構造の条件を満たしているかが確認出来ませんし、法規を遵守した建物になるかどうかも不透明です。
残念ながらそうしたプランでは建物は完成に向けて進んでいくことは出来ません。
仮にそうした状態で建物を実際に建てる段階まで進んで、施工の途中で「このままの計画ではNGかも…」となってしまうのは非常に困ります。
そうならない為にも、お客さんが作成したプランも当然参考にしつつ、そこからは意匠設計が様々な条件を満たしたプランニングをしていくことになります。
また、いくら作成した人が使いやすいと思っていても、設計のプロから見ると「今までの経験上これでは問題がありそう…」みたいな場合もあります。
そうしたプロの目から見た判断というのは、今まで積み重ねてきた経験からくるもので、そこはやっぱりプロとアマの違が出てくる部分ではないかと思います。
設計者個人が積み重ねてきた経験や、企業として経験してきたクレームなどを積み重ねてきたノウハウの蓄積というものは、やはり価値があるものなんです。