建物を設計していく細かい項目の中で、空調設計がどのような役割を担っているか、というあたりの話を前回は取り上げました。
空調機や換気や排煙など、空気に関する設備は基本的に空調設備になるので、空調設計で様々な計画をしていく事が求められます。
ただ、当然空調だけで設計を進める訳にはいかないので、建築工事や衛生設備、電気設備との調整が必要になってきます。
特に問題になるのが天井裏スペースにダクトをどう納めるかというあたりの話で、今回はそのあたりについてもう少し説明を続けてみます。
換気や排煙などで空気を建物外から建物内に、あるいは建物内から建物外に移動させる為には、空気の通り道となるダクトが必要になります。
ダクトのイメージはこんな感じのものになります。
銀色の丸い形状のものがダクトで、四角い場合もありますが、その中に空気が通ります。
上記の写真は天井を貼っていない状態で、場合によってはこうして綺麗にダクトを見せる場合もありますが、基本的には天井裏に隠していく方向で調整をしていく事になります。
最近の建物では階高を低く抑える傾向にあるので、その結果として天井内のスペースが狭い場合が非常に多くなっています。
そうなると当然天井内のレイアウト検討はかなり厳しくなってしまう事に…というあたりの話が最も空調で難しい部分になります。
天井内にダクトが納まらない場合は多々ありますが、そうした場合には天井の高さを下げるなどの処置がどうしても必要になります。
もしくはダクトサイズを小さくする事も考えられますが、これはあまり現実的ではなくて、ダクトを露出させる訳にもいかないので、やはり天井を下げるしかないんです。
天井の高さを下げるという話になると、見え方を含めて色々な部分に影響が出てきますから、意匠的に無関係とも言えないんです。
意匠を担当していると、勝手に天井を下げる検討をしないで欲しいと思ったりするのですが、空調設計からすると元々無理のある条件だったりする訳です。
どちらが悪いとかそういう話でははく、元々厳しい条件の中で最善を目指していく事になる場合が多い為、細かく調整が必要になるという感じです。
そうした経緯から「どうしてもこの範囲の天井を下げないと厳しいけど、意匠的にここは下げたくない」というような調整が結構出てくることになります。
このような調整が必要になるのは、あまりスペースがあるとは言えない天井裏に対して、それなりの大きさがあるダクトが入るからなのですが…
どうして空気の通り道であるダクトをそこまで大きくしておく必要があるのか、という部分でちょっと疑問に思うかも知れません。
しかしダクトの大きさは通る空気の量によってある程度決まってしまう為、無理矢理小さくすることが出来ないという理由があるんです。
仮にたくさんの空気が通る計画のダクトを無理に小さくした場合、小さいダクトに大量の空気が通る事になり、自然とダクト内の風速が速くなってしまいます。
風速が速くなってしまうと、空調機の場合は直接風があたる感触に不快感をもたれることになり、排気や給気などの場合は空気が出る部分で音が出てしまう事に。
いずれにしても建物を使用する人にとって不快な状況になる為、空調設計でダクトやガラリなどを計画する際には、最大風速という条件を守りながら設計を進めていくことになります。
こうしたさまざまな条件を踏まえて、建物の全館に空気を送り込んだり、逆に空気を外部に排出したりする設備を検討していくのが空調設計になります。
建物を利用する側にとっては、基本的に建物が完成した後の状態しか見ることが出来ませんから、どのくらい空調設計が天井裏のスペースで苦労をしたかが分かりませんが…
恐らく色々なルートを検討して、なおかつメンテナンスが出来ることを確認しつつ、空調の施工者とも打合せを重ねて出来上がった天井裏なんです。
こうした空調設計の苦労があってはじめて、建物を快適に利用することができる訳です。