建物を計画していく設計段階から、実際に工事を進める施工段階に移り、工事が完了した段階で建物の竣工引き渡しという流れになります。
前回はそうして建物が竣工した状況について少し説明をしてみました。
今回は建物が竣工した後で、実際どのように利用されていくことになるのか、というあたりの話について考えてみる事にします。
工事期間には色々な苦労をしながら建物を完成まで持っていったとしても、竣工引き渡しの状態でそのまま建物の運用が出来る訳ではありません。
というよりも、建物としてはここからが運用の準備に入る訳ですから、実際に建物を使うという意味ではここからが本番ということになります。
施工が完了して建物が出来上がったとしても、それはあくまでも建物の外形が出来上がったというだけであって、建物としてはまだ完全な状態ではないんです。
外形が出来上がって始めてその中身を入れることが出来る、という事です。
例えば家具などの備品を搬入したり、建物を使う為の道具などを色々と購入して揃えたり、実際に建物を利用する人が引っ越してきたりなど…
建物の用途によって準備の内容は少しずつ違ってきますが、建物を利用する為には雑多な準備が必要になってくるという話は変わりません。
これは自分の家を建てる事を考えてみるとイメージしやすいのではないかと思います。
例えば自宅を新築している時の事を想像してみると、たとえ自分の家が完成したと言われても、その瞬間からそこに住む訳にはいきませんよね。
そこに滞在するだけであれば、屋根と外壁だけで問題はないのですが、もちろんただ部屋に立っているだけでは住んでいるとは言えません。
人が住める状況にする為には、テーブルや椅子などの家具を搬入する必要がありますし、冷蔵庫や電子レンジなどの家電もセットしなければなりません。
あとはその家具に洋服を入れたり、冷蔵庫に食品を入れたり、洗面所に歯ブラシを置いたりなど、やるべきことはたくさんあります。
そうした諸々が完了してからようやくその建物に住むことが出来るようになる、というのは実際の生活を想像すれば分かってきます。
自宅よりも規模がかなり大きい建物であっても、その建物を利用出来る状態になるまでには基本的に同じような話があるんです。
もちろんそれは建物の用途によって違いますが、人が使う為の家具を搬入していき、消耗品関係を配置していく事などは住居と変わりません。
そうした色々な準備をしていく期間を経て、建物やようやく運用を開始することが出来ます。
とは言っても、設計者や施工者の立場で考えると、やはり建物の竣工がひとつの区切りであることは間違いありません。
後は施工者側が少しメンテナンス対応で残ったりする場合もありますけど、ほとんどの人は次のプロジェクトに向けて去っていくことになります。
特に施工者側は建物の規模が大きければかなりの大所帯になりますけど、それが一気に減ってしまうので少々寂しく感じることもあります。
色々な分野には分かれるものの、それぞれが建築に関する仕事のプロですから、また別のプロジェクトで一緒に仕事をする機会もあるかも知れません。
それが違う企業に勤めていたとしても、案外世の中狭いものでまたあうこともある、というあたりもこの仕事の面白みのひとつではないかと私は思っています。