計画段階から実際に施工をする段階まで、建物を建てる計画を進める中では色々なステップがある、という話を前回は取り上げました。
建物の運用を実際に開始する日というのはある程度計画で決まっている場合が多いので、それに間に合うように設計や施工を進めていくことになります。
例えば学校などでは4月から新学期が始まります。
なのでそれに合わせて1月から3月くらいには建物を完成させる必要があって、工事が5月までずれ込んでしまうと非常に困った状況になるのは想像が出来ますよね。
そうした理由があるため、設計者も施工者も、建物の完成予定日を必ず守るように色々な業務を進めていくことになる訳です。
今回からは、建物が完成するまでの流れを具体的に説明していくことにします。
まずは建物の大まかな計画を進める「基本設計」について考えてみることにしましょう。
建物を建てようと考えている人・企業の要望をヒアリングし、法的な条件とコスト面での条件も満たすような建物の計画をする段階を「基本設計」と呼びます。
基本設計段階で検討した項目をベースにして色々な検討を進めていくので、この方針がきちんと定まっていないと後で結構困ることになります。
基本設計で決めた事が実は検討不足で、改めて要望にあわせて計画をやり直すとか、それに付随する色々な変更が必要になったりとか。
こうした作業が後から出てきたりすると、建物の計画が進まないというよりも逆戻りしてしまう事になるので、様々な部分に影響が出てくる事に。
このように、基本設計というのは建物を計画していく中で非常に重要なステップという事になってくるのですが、しかしそれでも…
建物をどのように造り込んでいくかを考える基本設計業務は、やはり設計業務の中で最も面白い業務のひとつであることは間違いありません。
基本設計の段階では、あまり細かい部分まで図面で表現をすることはなくて、あくまでも建物全体の概要やプランを示した全体的な部分を表現していく事になります。
もちろん細かい部分についても色々と考えた方が建物にとっても良いのですが、その前にまずは全体的な方針を決める必要があるんです。
どのような建物を希望するのかという施主の要望を反映して、基本設計図は色々と調整や変更をしながら進めていく、という流れになります。
まだ色々な部分が定まっていない段階で細かい部分を検討しても、全体の方針やプランが変わってしまうと結局その検討が生かされない場合が結構あります。
それを繰り返すと結構無駄な作業が増えてしまうので、基本設計段階では細かい部分まで色々と表現していくような図面を作成するのは難しいんです。
とにかくまずは建物全体のプランや、階高をいくつに設定するかとか、敷地境界線との関係をどのようにするかなどの基本方針が先です。
こうした設計の手順などを色々考えていくと、基本設計の段階ではそこまで細かい部分について検討していく必要性はまだない、という感じになります。
これらを踏まえて考えると、基本設計段階で建物の大まかな方針を示す為に必要となるのは、以下のような種類の図面という事に。
・配置図 : 敷地に対してどのような位置関係に建物を配置するのかを表現する図面
・平面図 : 各階の平面プランを階毎に表現していく図面(全体図なのであまり細かくはない)
・立面図 : 建物の外壁を各面表現した図面
・断面図 : 建物全体を縦方向に切って高さ関係を表現した図面
・矩計図 : 断面図をもう少し拡大してある程度詳しく表現した図面
・仕上表 : 外装や各部屋の仕上材が何になるかを表現した図面
建物の基本情報として、設計者は上記のような図面を作成していくうことになります。
これらの図面は「一般図」と呼ばれ、建物の概略はこうした一般図によってある程度のレベルまでは表現されていきます。
こうした基本設計段階が完了したあとは、どのようなステップに進んでいくのか、という話を次回は取り上げてみることにします。