建物を建てるプロジェクトは建物の竣工で一段落という感じになりますが、竣工間際になると設計者も施工者もなかなか忙しくなります。
最後は余裕を残して終わる、というようなプロジェクトがあれば良いのですけど、現実はそれほど甘くないという感じで、かなりバタバタする場合がほとんどではないかと思います。
忙しさの要因はいくつかありますが、建物で言えば完成した建物を色々な立場の人が確認する「検査」というイベントがあって、ほぼ毎日何かしらの検査があるような状況になります。
設計者の検査や施工側の自主検査、消防の検査や施主の検査など、検査と言っても様々な種類があって盛りだくさんです。
当たり前の話ですけど、どのような種類の検査であっても、検査をする側は竣工間近の建物を真剣に確認していくことになります。
そうした検査対応をスケジュール調整から始めるのはかなり大変な仕事になります。
もちろん検査で指摘された部分の手直しする必要もあって、それにも丁寧な対応が必要ですから仕事量としてはかなりの物量になります。
建物がきちんと完成していて、様々な検査での指摘事項がゼロになればそれが一番なのですが、まあ実際には色々な指摘事項が出るのでその対応が必要になってくるものです。
ちょっと変な表現をしてしまいますが…
検査をする側の心理として、特に何の指摘事項もなく検査を完了するというのは、仕事をしていない感じになるので何となく気が引けるものなんですよね。
そう言った理由から、大抵は何かしらの指摘があるものです。
もちろん無理矢理作り出した指摘という訳ではなく、色々な人の目で様々な角度から見ると不足している部分が結構ある、ということなのだと思いますけれど…
まあとにかく検査では指摘が結構出ます。
工事側で竣工直前にやる作業はこうした検査対応が主になりますが、書類的な部分を見ても竣工時に用意するものは結構たくさんあります。
竣工引渡しに関わる取り扱い説明書的な書類も色々ありますし、それに加えてボリュームが多いのが図面の枚数です。
建物が竣工する際には、その建物がどのような形状で完成したかを示す図面が必要になってきて、それらの図面を修正して整えておく必要があるんです。
なぜそうした図面が必要になるかと言うと、建物が竣工した後の維持管理をしていく為には、竣工時の状態を示した図面が必要になってくるからです。
こうした建物竣工時の図面を「竣工図」と呼びます。
建物の維持管理をどう考えるかは施主次第ということになりますが、場合によっては維持管理を施工者ではなくて施主自らやることになるパターンも結構あります。
施主が規模の大きな企業であれば、そうした専門の部署があることが多いですから、その部署が建物の維持管理を担当することになる訳です。
施工者が施主と契約しているのは建物を建てる工事になるので、契約はあくまでも竣工引き渡しまでで、後は竣工後何年かの保証期間の対応があるだけになります。
その後のメンテナンスもお願いすれば施工者は対応しますが、その為には改めて工事契約を結ぶ必要があるんです。
コストなどを考慮すると、全ての対応を施工者にお願いする訳にはいかない、という場合も結構ありますから、簡単なものは施主が自らやることになります。
規模の大きめな改修工事の場合は施工者と契約して工事を進めることになりますが、そうした工事の際にもベースになるのは竣工図という事に。
これらを考えていくと、建物の竣工引き渡し時にその建物の状況を表した竣工図をまとめておく事は結構重要な事だと言えるでしょう。
竣工図がどのような図面になるのか、というあたりの話は次回に詳しく説明していく事にします。