前回は建物を実際に作っていく段階で、様々な工事や業務を専門にやっていく企業がたくさん参画していく事になる、というような話をしました。
そうしたたくさんの企業がどのようにまとまっていくのか、というあたりの話も今回少し取り上げますが、まずはたくさんの企業が参画するという話だけをここでは覚えておきましょう。
建物を造っていくという業務にも色々な種類がある。
だからそれぞれの業務にはそれぞれ専門的な知識やノウハウが必要になってきて、全て同じような考え方で進めることは出来ません。
それぞれの業務についてのプロフェッショナルが集まって、それぞれのプロが協力し合っていく事で建物が完成していく、という感じです。
前回は設計業務を専門にしている企業がタイルを施工するのは難しい、という話をしましたが、もちろんその逆も非常に難しいものがあります。
タイルを焼く工場を持っていて、なおかつ現場でタイルを貼ることを専門としている企業が、建物全体を設計する技術やノウハウを持つというのは至難の業でしょう。
プロフェッショナルとしての高い技術を身につけることが企業としての強みになる中で、手広く色々なことをやるのはリスクが高い、ということなのだと思います。
ちょっと例えは良くないかも知れませんが…
洋服も売っているし食品や家具も売っているという総合店が、洋服の専門店や大規模な家具専門店を相手に苦戦しているという状況に似ているかも知れません。
利用する側からすると、色々なジャンルの商品を扱っているお店があると助かるんですけど…その要望に対する回答が恐らくショッピングモールと呼ばれる複合店舗なのでしょう。
洋服であればそれに特価した方が価格や品質を追求できるのと同じで、タイルを専門とする企業であればそこに特化して技術を深めていく、というのが企業として勝ち抜いていく為のやり方なのだと思います。
そうした事情があるため、建物を建てる際には様々な企業がそれぞれの役割を果たすために色々と絡みながら仕事を進めていく必要があるんです。
それが大きな分類で言えば「設計」と「施工」になり、もっと細かく分類すれば「施工」は「鉄筋工事」や「建具工事」に分類出来る、ということになります。
施工に関して言えば、それらの細かい分業状態を取りまとめる役割を、いわゆる「ゼネコン」と呼ばれる企業が担っています。
それぞれの工事区分毎に専門企業と契約して、適切な時期にそれぞれの工種を担当する企業を呼んで工事を進めていく、というような仕事をしています。
この分業体制は「元請け」と「下請け」という立場を作るものですから、仕組み的に完璧なものとは言いがたいとは思います。
お金を払う側で、なおかつどの企業を選ぶのかを決めることが出来る立場と、相手に選ばれて仕事をしてお金を貰う立場に分かれる訳ですから、まあ分かりやすい上下関係が出来上がることになります。
少し例を挙げてみると、元請けであるゼネコンのちょっと偉い人が、下請けの人に対して怒鳴ったりとか、暴言を吐くなどの話がある訳です。
そういった感じの、ちょっと馬鹿馬鹿しくも本人たちにとってはかなり深刻な状況が発生しやすい仕組みがである、というのが現実です。
これは建築業界に限った話ではないかも知れませんが、こうしたパワーバランスの中で仕事をするのはあまり気持ちの良いものではありません。
元請け側に属している方のであれば、もしかしたら「偉そうに出来る」という事をメリットに感じるかも知れませんが、まあこれはそこまで大きなメリットでもないんです。
このように、少しひずみのある組織ではありますが、しかしそれでも長年こうしたやり方で建物を完成させて来たというのも事実です。
ゼネコン側としても大きな責任を背負って仕事をしている訳で、ただ単に偉そうにしているだけという人は今まで見てきた中でごく一部です。
だから、こうしたやり方が全然ダメで最低のやり方とも言えないんですよね。
否定するからにはそれよりも良い考え方を提示する必要がある訳ですが、今よりもっと良いやり方を提示することは私には出来そうにありません。
それが出来ない以上、現状を批判しても仕方がありません。
と、ちょっと話が違う方向に進んでしまいましたが…
建物の竣工までには様々な企業がそれぞれの得意分野で力を発揮していく、というやり方が現在の主流になっている、ということをここで覚えておいて頂ければと思います。