ゼネコンがそれぞれの工事を別の企業に発注するだけで、実際は何も仕事をしていないのではないか、というちょっと極端な意見について前回は取り上げました。
実際はそんな事はないのですが、業務を細分化していくという流れだけを見るとそう感じてしまう場合もあるので、あえて少し極端な意見で話を進めてみました。
ゼネコンにも色々な規模があって、中にはスーパーゼネコンと呼ばれる従業員が1万人を超えるような巨大な企業もある訳ですが…
そうした巨大な企業が何も仕事をしないまま存続できるはずはなくて、実際には色々と責任を伴う重要な業務をしているんです。
今回はそのあたりの話をもう少し具体的に見ていくことにします。
前回は鉄骨工事を例に出したので引き続き鉄骨についての話をすると…
鉄骨を実際に工場で製作する為には、外壁やサッシュを取り付けるための金物を鉄骨にあらかじめ取り付けておく必要があります。
そうした下準備をしておかないと、鉄骨が建った後で外壁を取り付けようとしても、どこにも固定する場所がない、というような寂しい状況になってしまいます。
そんな状況になってしまうと当然、工事はストップしてしまいます。
というか工事をストップしたところで鉄骨に何も取り付けが出来ていない状態は変わらないので、結局現場で鉄骨に対して何らかの部材を溶接して付けていくことになります。
構造体の鉄骨に対して現場で溶接をするのは構造体としては全然良くない事なので、そうならない為にも次の工事を考えた仕込みをしておく必要がある訳です。
もちろんそうした下地などの取り付けが鉄骨に必要だということは、当然鉄骨を専門とする企業も充分に分かっています。
しかしどのような金物をどこに取り付けておくのが良いのかの判断は、鉄骨を専門に製作している企業にはなかなか判断する事が難しいという現実があります。
鉄骨を製作する事を専門にしている企業は、鉄骨を製作する事を最優先で考えているので、外壁との関係を見ていくことが難しいのは当然の事でしょう。
そうした状況の中で、ゼネコンが納まりを調整していき、鉄骨工事としてどのような対応をしておけば良いのかを指示していく、という流れになります。
これは鉄骨専門企業の技術がゼネコンよりも低いとかそういう次元の話ではなく、建物全体の納まりを見ているゼネコンがやるべき業務という話です。
ここで挙げたのは分かりやすい一例ですが、このような「他の工事との絡み」というのはそれこそ膨大な部分であって、それぞれに細かな調整が必要になってきます。
そのあたりをゼネコンが適切に対応していくことによって、建物を造っていく工事全体を円滑に進めていくことが出来るようになる訳です。
もちろんその逆の話もあります。
他の工事との絡みを考えずに単独で進めた結果、現場で何か新しい工事を始めようとする都度、取り付け出来ないみたいな問題が発生して工事が遅れていく、ということも結構あります。
そうした緻密な検討を重ねていき、実際に工事が始まった段階でスムーズに工事が流れていくように計画していくのがゼネコンの役割です。
もし結果としてそれが出来ていなかった場合でも、コストと時間をかけて対応していくのも、その結果として工程が遅れるのをどこかでカバーするのもゼネコンの役割になります。
言うまでもないと思いますが、こうした調整は非常に手間と時間がかかるもの。
そうした面倒で手間のかかる検討を進めるのはゼネコンの仕事で、前回も色々と書きましたが、工事を他の企業に割り振るだけで終わる程簡単な業務ではありません。
コストと工程などの責任が伴う非常にプレッシャーのかかる役割を担っているので、元請けと下請けという関係だけを見て判断しない方が良いでしょう。