建物を計画していく段階で設計者が進めていくのは、建物が建つ敷地の条件に合わせた建物の計画を図面に落とし込んでいく事です。
法的な面と使い勝手的な部分、そしてデザイン。
これらの条件を満たした建物を出来るだけ効率良く建てる為には、この設計段階での調整が非常に重要な意味を持ってきます。
こうして建物の設計をしていく中で、基本設計段階では平面図や断面図・立面図などの「一般図」と呼ばれる図面を少しずつ調整していくことになります。
その次の実施設計段階では、作図する図面の種類は細かい表現をするという方向に向けて飛躍的に増えていく訳ですけど、そこでは様々な企業が設計協力という形で参加することになります。
一例を挙げてみると、建物の外装を構成する大きな要素であるアルミ建具なども、設計図の中で細かく表現をしていく事になります。
しかし設計者がアルミ建具を製作している訳ではないので、大抵の場合は三協立山やLIXILなどのアルミ建具を製作・販売している企業が作図した図面が使われています。
なぜそれぞれの専門的な企業に図面を作図してもらうのかというと、設計図に表現する詳細図のリアリティを高めるため、というのが大きな理由ではないかと思います。
各企業の分担について書いた時に少し触れましたが、建物を設計することを得意としている企業は、建具を工場で製作するためのノウハウを持っていません。
分業になるのでそれは当然なんですけど、それでは設計者が作成する設計図に現実味が全然ないということも考えられます。
図面ではいくらでも絵を描くことは出来ますけど、実際の製品として成り立っていないのであれば、いくら図面を描いても仕方がないですからね。
そうした「絵に描いた餅」にならないように、設計段階でそれぞれの専門分野を得意としている企業に協力してもらい、現実味のある内容の設計図を作成していく訳です。
これを「設計協力」と呼びます。
設計協力をする企業の目線で考えてみると、やはりビジネスですからある程度のメリットがないと協力は出来ないのですが、もちろん設計協力することによるメリットは大きいです。
いくら設計図に具体的な建具の図面が記載されているとは言っても、それと同じメーカーの商品を施工側が採用しなければならない訳ではありません。
そのような義務は全然なくて、コスト的なメリットを考えて同等の性能を持つ製品を採用することになる場合もかなり多いです。
ただ、そうは言っても設計図に記載されている製品をそのまま使った方が都合が良い、という場合も多いので、そこはやはり大きなメリットになるんです。
多少余計にコストはかかるけれど、設計図で表現されている図面と同じメーカーを採用した方が効率的、という選択をゼネコンがすることも結構ある訳です。
もちろん全てのシチュエーションでそうなるとは限りませんけど、メーカーとしても全部がそうなる必要はなくて、ある程度の割合でそうなれば良いと考える訳です。
ある程度の割合で設計協力したプロジェクトに参画出来る、というのはやはりメーカーとしても大きなメリットがある事のはずです。
今回具体的な例として紹介したのはアルミ建具だけですけど、もちろんアルミ建具以外でも、建物を構成する様々な部分で同じような話が出てくる事になります。
金属工事に分類される庇などの詳細も専門性が高いため、メーカー側が作図した図面を設計図として利用する場合がほとんどでしょう。
こうした設計協力は施工者的なメリットだけではなく、設計図のリアリティが増すという事実を見れば、施工者側にとってもメリットは大きいのではないかと思います。
設計図に記載されているメーカーを採用しなかった時に、少し納まりが変わってしまうというデメリットはありますけど…
施工者は納まりを検討するプロでもある訳ですから、それがネックになって建物の施工が進まないなどということはありません。