設計者が作成する設計図をベースにして施工者はまた別の図面を作成する、というような話を前回は取り上げました。
実際の施工は施工者が作成した施工図をベースにして進められる訳ですが、施工図のベースはあくまでも設計図になるので、設計図が非常に重要な役割を果たすことは間違いありません。
ただ、設計段階から施工段階に進んでいく段階で、施主がどのような建物を望んでいるのか、という情報は少しずつ具体的になっていきます。
そうした情報が具体的になっていくにつれて、設計図の内容が少しずつ変わってしまう場合も多いのが困ったところでもあります。
そうなると設計図に記載した内容を修正していく必要がある訳ですが…
理想的な話だけをすれば、それらの図面全てを修正すれば良い、ということになるのですけど、仕事において時間の概念を無視することは出来ません。
限られた時間の中でベターを選んでいくという状況の中で、詳細図はちょっと修正が間に合わないけど仕方がないか、ということになったりすることもある訳です。
そうしたことを繰り返すと発生するのが「設計図の中で違うことが書かれている」という状況で、これはもうある程度仕方がないことだと私は思っています。
もちろん食い違いがない設計図をまとめることが理想的ですし、何よりそれこそが設計者に求められる仕事だとも言えると思います。
しかし、そうした細かい部分に気を遣うよりも、もっと全体的な部分の考え方をまとめていく事の方が大事、という話が現実としてあるので、ある程度の妥協はどうしても必要なんです。
内容の食い違いについては施工者側でも施工図を作図する際に疑問に思いますから、どちらが正解なのかをお互いに確認すればそれで済んでしまいます。
そうした部分の整合性を高めていく事に時間をかけるよりも、建物のメインになる部分についての詳細を設計図に記載することに時間をかけた方が良いのではないか、という考え方です。
もちろんこうした考え方は人によって様々ですから、私の意見が全面的に正しいという乱暴な意見をここで押しつけるようなことはしません。
しかし、現実はなかなか理想的にはいかないというのも事実。
そうした現実の中でどういう選択をしていくか、という判断もプロには求められるはずなので、理想的な話をしているだけでは済まないんですよね。
このあたりはバランスが重要になってきます。
一緒に仕事をしてきた方の中には時々「理想を追いすぎではないか」と感じる方もいましたが、現実との板挟みに耐えられなくなって辞めてしまう場合が多いようです。
理想的な話は確かにあるけれど、もう少し現実との折り合いをつけていけば、それほど苦しい状態にはならずに済んだのに…と思ったことは結構あります。
仕事というのは結局最後まで継続した人が勝ちです。
仕事を継続していく限りは成長していくことが出来ますから、仕事を続ければ続けるほど理想に近づいていくことになるのは間違いありません。
仕事ですから理想を目指すのは当たり前ので、ただしそうは言っても現実がある訳ですから現実も見ていく必要があるのではないかと思います。
ちょっと話がずれてしまいましたが…
建物を建てる上で設計図が果たす役割は非常に大きいものがあります。
ただし施主の要望などが最初から具体的である訳ではない事もあって、設計図にはある程度の不整合がどうしても出てきてしまう、ということをここではお伝えしておきます。
そこで重箱の隅をつつくような姿勢でいるよりも、もう少し大きな視点で設計者の意図を汲んで施工を進めていく、というやり方が理想的です。
施工のプロであれば、多少の不整合を許容して随時設計者と密に話をしながら進めていく、ということは普通に出来ることですから。