建物が竣工して施主に引き渡しされる前後では、その状況を図面に記録した「竣工図」と呼ばれる図面が必要になってきます。
その竣工図はどのような図面になるのか、というあたりの話を今回は考えてみたいと思います。
まず結論から書いてしまうと、竣工図というのは設計図を建物の最終形にあわせて修正した図面の事を指します。
建物の方針を示す為に作図された設計図ではありますが、施工段階で施主の要望にそって変更をしたり、あるいは施工者との調整などで最終形とはかなり変わっている場合がほとんどです。
当初の計画状態で設計図がある訳ですけど、それではやはり情報としては古い状態なので、その内容を最終形にあわせて修正していく訳です。
そうして建物の完成形に合わせて修正された設計図一式を竣工図と呼ぶ訳です。
設計図は建物を建てようとする際の指針となった図面ですから、その建物が竣工した時には設計図をベースにするのはごく自然なことでしょう。
施工図も竣工引き渡し時の資料として提出することになりますが、施工図は施工図として提出していき、竣工図は竣工図として設計図を修正する必要があるという事です。
施工図をベースにして建物の施工を進めている訳ですから、設計図とは違って施工図はその建物の最終形にほぼ合っている状況になっています。
だから施工図を完成した建物に合わせて修正する手間はそれほど大きくないのですが、やはり設計図を修正していくのはかなりの労力が必要になります。
今の設計図はCADで作成されている事が普通になっていますから、作図されたデータを利用して修正していけばスムーズに竣工図が出来上がることに。
…となれば誰も苦労はしないのですが。
実際は当初作図された設計図から、施主や施工者との打ち合わせを重ねてかなり変わっていることがほとんどです。
そうした変更内容をすべて設計図に盛り込んで修正していくのは、やはりかなり大変な作業ということになってしまう場合が多いです。
ただ、いくら大変な作業とは言っても、今後建物の維持管理をしていく中で重要な資料となる竣工図ですから、あまり適当な事は出来ません。
後で困った状況になる事は避けたいので、結局は竣工図を現状にあわせてきちんと修正していき、建物の最終形として残しておく事になります。
ちなみにこの竣工図を誰が修正するのかというと…
基本的には設計図を作成したのは設計者ですから、その設計図を修正するのも設計者の役割という事になっています。
ただし、最近の設計図には「設計図のCADデータを施工者に渡す事が出来るけれど、その代わりとして竣工図を施工者でまとめる」みたいな文言を付けることが多くなっています。
だから結局は設計者ではなく施工者が竣工図をまとめる場合が多いです。
施工者側としても施工図を作図するにあたり、設計図のCADデータがあるのとないのとでは作業効率の大きな影響があるものなんです。
だからどうしても設計図のデータは欲しいところで、設計者としては苦労して作成した設計図のデータを渡す事に抵抗を感じる場合もあります。
そのあたりのバランスを考えていくと、設計図のデータは渡すけどその代わりに竣工図は施工者で修正してください、という話はなかなか良い交換条件でもあります。
こうした考え方によって、最終的に竣工図をまとめる役割を引き受けてでもCADデータをもらう、というパターンが最近では多いです。
設計者によっては自分できちんと設計図を最後まで変更対応修正していく場合もありますし、施工者が修正する場合もあって、これはプロジェクトによって少しずつやり方が変わります。