床・壁・天井のどのような納まりでも、出隅や入隅で仕上材が交差する部分では、どちらを伸ばして納めていくかという「勝ち負け」を決めておく事が重要になります。
というような話を前回は取り上げました。
仕上材の勝ち負けについての考え方は色々な部分で出てくるので、納まりを検討していく中で毎回意識せざるを得ない事になると思います。
今回はそんな勝ち負けについての話をもう少し続けていくことにして、特に出隅で出てくる可能性がある「小口」の見せ方を考えてみることにします。
まずは小口(こぐち)とは何かという話ですが、小口には「切った所・切断面・切り口」というような意味があります。
前回壁の出隅で勝ち負けを検討する例として、壁出隅のタイル納まりを例に出しましたが、その図面ではタイルの小口が見えてくる関係になっています。
壁の出隅で勝ち負けの納まりを採用すると、上図のように仕上材の小口が見えてくる納まりになる場合があります。
上図のようにタイルの場合は小口が仕上がっている製品があるので、小口が見えてしまう事がそれほど見た目に影響を与えることにはなりませんが…
これはタイルだからそうなるという話で、石膏ボードに塗装などであれば、石膏ボードの小口はパテ処理などで隠れてしまうので、それほど見た目を心配することはありません。
しかしDボードなどであれば、やはり出隅にボードの小口が見えてくる場合があるので、そこをどのように見せるかは納まりを検討する中で重要な要素になってきます。
上図のようにDボードも小口は仕上がっているので、タイルの場合と同じように特に見た目として大きな問題にはなりません。
しかしセラールやアルポリックなど、小口の切り口が綺麗に仕上がっていない仕上材もあるので、そうした仕上材を採用する場合には少し注意が必要になります。
アルポリックであれば「カール加工」と呼ばれる加工をする事で、小口側にアルミ層をまわしていく処理が可能なのですが…
そうした処理をしない場合には、出隅に何らかの部材を入れて綺麗に納めていくしかありません。
上図はセラールの出隅納まりの一例で、このような納まりを採用すれば、小口が仕上がっていないセラールを綺麗に見せる事が出来ます。
もしセラールの出隅で勝ち負け納まりを採用した場合には、あまり美しいとは言い難い小口が見えてしまうので、納まりとしては綺麗とは言えません。
今回は壁の納まりを例に出しましたが、仕上材の小口をどう見せるかというのは、建物の様々な部分で出てくる納まりの関係になってきます。
どちらの仕上材を勝たせるかの検討をした際には、それが出隅であれば、勝たせた方の仕上材の小口が見えてくることになるので、勝ち負けの納まりとはセットになります。
勝ち負けの納まりは、施工の順番によって勝ち負けが決まる場合も多いので、どのような順番で施工が進んでいくのかを知っておく事も求められます。
それにプラスして、もしどちらかの仕上材の小口が見える納まりになるのであれば、製品として小口がどのようになっているかを確認しておく事が重要です。
納まりの検討をする際には、意外に感じるかも知れませんが、自分の目で実際に見たり触ったりした事がない仕上材の図面も描いたりします。
石膏ボードなどの一般的な材料であれば、目にする機会も多いはずなので特に問題はないのですが、やはりちょっと特殊な仕上材になると、見た事がないというパターンはあると思います。
しかしそれではやはり納まりの検討としては不充分なんですよね。
自分が綺麗に納めようとしている仕上材は、実際にはどのような製品になっているのか。
それを知っておかないと納まりの検討が上手くいかない場合もあるので、色々な仕上材を一度自分の目で見ておき、手で触れておく事をお勧めします。