様々な部分の仕上材について、どのような製品を採用するのかを決定するのは設計者の業務で、それによって建物がどのように見えてくるかが大きく変わってきます。
だからこそ意匠設計者が色々頭を悩ませることになり、最終的には建物の仕上をトータルで考えている意匠設計者の腕の見せどころ、という感じになってくる訳です。
こうした仕上材の選定作業をしていく中でいつも思うのが、やはり意匠設計者は建物を美しく見せるプロだなということ。
施工者の立場として色々な意見をする場合もありますが、それはあくまでも納まりという観点からの意見なんですよね。
もちろん施工者としても最大限建物の見え方に気を遣っているのですが、納まりや施工の手間などを意識せざるを得ないので、意匠が最優先にはなりにくいんです。
最終的に統一感のある見せ方をする事や、ある程度手間がかかるけれどこうした見せ方にしたいなどの意見は、やはり意匠設計者による場合が多いです。
そうした要望によって、最終的には建物の見た目が美しくなるのだと思います。
また、前回も少し取り上げましたが、仕上材の色や柄などが違う事によって、仕上材自体のサイズが変わってくる場合が結構あります。
そのような仕上材がある場合には、該当する仕上材の色が決まらない限り、納まりや割付の考え方が決定してこないという問題があります。
それらの納まりによっては、鉄筋コンクリートや鉄骨など、早い段階で施工を進めるものに影響する可能性も結構あるはずです。
一度打設したコンクリートを壊すなどの手戻りをなくす為には、やはり出来るだけ早めに仕上材の選定を進めていくのが理想的な流れになってくるでしょう。
最も理想的な話をすると、工事の初期段階ですべての仕上材が決まっているという状態がベストである事は間違いありません。
しかし現実を考えると、そのようなタイミングですべての仕上材や色までもが決まっているというのは、やはり相当難しいというか不可能に近いと思います。
物事には当然優先順位がありますから、例えば壁の塗装色を検討して決めるよりも前に、外壁のアルミ建具納まり方針を決める方が優先という事になります。
そうした色々な検討項目の種類やボリュームを考えると、すべての仕上材について色や製品が施工の序盤に決まるというのがいかに難しいかが分かってきます。
なので、そうした理想的だけど現実とはかけ離れた話をするのではなく、出来るだけ現実的なやり方で仕事を進めていくしかありません。
現実的な考え方で仕上材の決定スケジュールを考えていくと、まずは鉄筋コンクリートや鉄骨などに絡む部分を先に決める必要性がある事が分かってきます。
例えばタイルの品番を決めておき、選定された品番にあわせてタイルの割付けを決定して、その結果として鉄筋コンクリート壁の開口が決まるとか。
タイルのサイズによってアルミ建具廻りの抱き納まりが決まり、それによって鉄筋コンクリート開口部の欠き込み形状が決まるとか。
工事の序盤にある程度施工が進んでしまう部分では、先に仕上材の選定を済ませておき、それを踏まえて納まりを確定しておく必要があります。
こうした鉄筋コンクリートや鉄骨など、先に施工していく部分に絡む仕上材をまずは先行して決めていく事が重要になってきます。
そうした作業を円滑に進めるには、施工者が「どの仕上材を先に決定したいか」を明確にしておき、仕上材の選定期日の要望を出す、という作業が必要になってきます。
決定する項目はかなりのボリュームになりますから、それらの項目に優先順位をつけていき、そのスケジュールに合わせて作業を進めていく事が求められる訳です。
施工者としては、工事を円滑に進める為に、このようなスケジュールを綿密に組んでいき、設計者に決定のタイミングを早めて貰う事が重要になってきます。