入巾木の納まりによって石膏ボードを1枚増し貼りする必要がある、という割と困った状況について前回は色々と考えてみました。
石膏ボードも無料で手に入る訳ではないので、あまりむやみに増し貼りをしたくない、と言うのが施工者の本音ではありますが…
建物の性能を確保する為に必要なのであれば、それはやらなければならない事なので、そこを誤魔化して納めることは出来ません。
なので、出来るだけ早めにそうした方針を決めておく事が重要になってきます。
建物の施工段階ではやるべき事が本当にたくさんあるので、入巾木にしたい範囲を決める、みたいなちょっと軽い話は後回しになってしまいがちです。
これは意匠設計者の立場で考えても当然そう感じるのですが、出来るだけ早めに決めておき、LGS+石膏ボードの壁厚を決めておきたいところです。
さて、そろそろ床と壁との取り合いについての話はネタが尽きてきた感じなので、もう少しで次の話に進んで行くことが出来そうです。
あと残りの話としては、今回取り上げていく巾木の高さについての話と、巾木をなくした納まりにする場合についての話くらいですね。
まずは一般的な巾木の高さについての話を今回はしてみましょう。
ここで巾木の役割をもう一度おさらいしてみると…
まずは床と壁の取り合いを隠す目的で巾木を設置する、という話がありました。
もうひとつは、足で蹴ってしまったり掃除機などがぶつかったりするので、壁の足元を保護するという目的で巾木を設置するという話もありました。
基本的に建物の床は、誰かが掃除することによってはじめて清潔さを維持する事が出来る訳ですが、その為の道具として掃除機やモップやポリッシャーなど様々な掃除用具があります。
床が石やタイルなどであれば水拭きが必要になるのでモップがけなどをするはずだし、カーペットなどであれば掃除機をかけていく事になります。
ちょっと当たり前のことを書いてしまいましたが、そうした掃除機などをかける際に、壁にどうしても掃除機の頭が当たってしまうんですよね。
モップ掛けの場合でも同じで、そうした時に巾木がないと、相手が石膏ボードになる訳ですから、壁にぶつかった後がついたり汚れたりしてしまうんです。
それを繰り返していくと、もう壁の足元は見苦しい状態になってしまうので、それならば最初から違う仕上材として巾木を設けておいた方が良い、という事になる訳です。
こうした役割を持っている巾木にはどの程度の高さが必要なのか、どの程度の高さが適切なのか、という話が今回のテーマになる訳です。
こういう話の場合はメーカーの基本仕様を調べてみるのが一番良いという事で、最も一般的に採用されるビニル巾木のカタログを見てみると…
巾木を販売しているメーカーとしては、40mm・60mm・75mm・100mmという高さのラインナップを用意しているようですね。
巾木の高さとしては上記の4種類が適正な寸法になっている、という事ですね。
まあこれはちょっと無責任すぎる説明になってしまいましたが、一般的な巾木の高さで多いのは、私の経験上は60mmになります。
60mmあれば恐らく掃除機やモップが壁にぶつかってしまう事が避けられるし、あまり高すぎても見た目として少しおかしいという判断もあるのでしょう。
意匠設計者としては巾木を出来るだけ目立たせたくないと考えるので、40mmの巾木も選択肢の中に入ってくると思います。
もちろん40mmでも充分に巾木としての役割を果たすことが出来るので、高さを抑えて目立たなくするという目的があるのなら40mmでも良いと思います。
ただ、40mmの巾木というのはどうも一般家庭の巾木というイメージがあるので、マンションなどで採用する事が多いという気がします。
建物の種類やスケール感などを考えると、60mm程度が最もしっくりとくる感じです。
建物を利用する方はそれ程巾木の高さを気にしない、という現実もありますけど…
そこはやっぱり意匠設計者として、建物をどう見せるかの考え方を統一させておき、色々な種類の巾木高さを揃えておいた方が良いと思います。