前回は巾木としてタイルを選定する部屋の条件について考えてみて、床がタイル仕上、巾木もタイル、壁は一般的な塗装などの場合の納まりを紹介しました。
タイルはある程度厚みがある製品なので、巾木として採用する場合には、小口が綺麗に見えるかどうかを意識しておく必要があります。
それが難しい場合には入巾木にする事も選択肢のひとつとしてありますが、巾木をタイルにしないという選択肢も全然アリです、という話も前回は取り上げました。
床がタイルだから巾木もタイルに、という考え方ではなくて、床タイルに対してどの巾木が最も綺麗に納まるか、という考え方が正解という感じです。
巾木にタイルを貼る納まりを紹介しておきながらこんな事を書くのも変ですが、上図のように綺麗に納めるには結構苦労するものですから。
今回は壁が全面タイルの場合の巾木納まりがどのようになるのか、というあたりについて考えてみたいと思います。
壁を全面タイルで仕上げるという場所は建物全体で考えるとそれ程多くはなくて、主に外壁や浴室などの水回りという事になるかと思います。
あとは意匠的に壁面の一部をタイルにするなどの場合もありますが、それはちょっと例外的な納まりという事で今回は除外することにします。
外壁や水回りの壁仕上でタイルが選定される場合には、壁下地はLGS+石膏ボードではない場合がほとんどになってくるはずです。
外壁では止水ラインを形成する為、水廻りの部屋ではアスファルト防水を立ち上げる為、という目的で壁の下地は鉄筋コンクリートになる場合が多いです。
と言うことで、壁下地が鉄筋コンクリートで壁が全面タイルになっている場合の納まりについて考えてみると、以下のような納まりになっています。
壁のコンクリート面は、コンクリートを打設した直後の状態では凹凸があるので、まずはモルタルで平滑に仕上げてからタイルを貼っていく事になります。
そのあたりの調整代も考えて仕上位置を決めておく事がまずは重要になってきます。
外壁の場合は上図のような納まりになって、モルタル補修+貼り代+タイルの厚みという計算でコンクリート面からの必要寸法が分かってきます。
コンクリート壁の精度もあるので、モルタル補修の寸法を若干大きめにしておく事で、施工誤差を吸収することが出来る、という感じです。
例として具体的な数値を出してみると、以下のような感じの数字になってくると思います。
モルタル補修6mm+貼り代2mm+タイル厚み7mm=15mm
ただ、タイルの厚みというのはタイルの品番によるのですが、品番が決まる前にある程度外壁面を決めておく必要がある場合も多いです。
そうした状況になった場合には、ある程度タイル厚を想定しておいて、あとはモルタル補修の寸法で若干調整するなどの対応をする事になります。
仕上面が想定からずれてしまうと、タイル割付の検討が全部ダメになってしまう可能性が高いので、まずは仕上面を想定しておくことが重要です。
タイル割付を検討する前にタイル品番を決めるというのが理想ですが、なかなか理想的には進まない場合も多いので、その場合はどこかに「逃げ」を見ておくしかありません。
今回の場合はモルタル補修の寸法で逃げておくという感じですね。
巾木という観点で考えていくと、壁が全面タイルの場合、巾木をタイルにするというよりも壁がそのまま床まで伸びているという感じになると思います。
壁仕上材が床まで伸びているという事はつまり、巾木としては「特になし」という考え方になるかも知れませんが…
床仕上材が足元のタイルと取り合ってくることに変わりはないので、ここでは壁タイルと床タイルとの取合いについて考えてみます。
外壁をタイルとして床までタイルを伸ばしていく場合、床との取合いは基本的に壁タイル勝ち納まりという事になるのが一般的です。
ちょっと話が長くなってしまったので、外壁タイルの足元と床との関係については、次回に図面を交えて詳しく説明していくことにします。