意匠設計者の考え方として「壁を出来るだけシンプルに見せたい」という基本方針があると、なるべく巾木を付けないで納めるような検討が必要になる場合があります。
確かに巾木がなく壁だけが見える納まりは余計なものがない状態なので、見た目としてはシンプルで美しく見えるかも知れません。
ただ、それが実現出来る壁はある程度限られてきます。
巾木が持っている役割を考えてみると、通常のLGS+石膏ボードの壁ではなかなか難しい、という事になってくるのではないかと思います。
前回はそんな話の中で、巾木なしで納めることが出来そうな壁の種類についていくつか具体的な例を挙げながら話をしてみました。
壁仕上材が石の場合、そして壁仕上材がタイルの場合、という事で、基本的には掃除の際に壁が汚れにくい仕上材であれば巾木なしでも問題ないという結論でした。
やはり石膏ボード+塗装などの壁では、最初は良いのですが建物を利用している中で壁の足元がどうしても汚れてきてしまうんですよね。
どの時点で美しい状態を目指すのか、という議論はありますが、建物を実際に利用する施主の立場で物事を考えると、やはり後で汚れることが分かっている納まりは採用しない方が良いでしょう。
さて、今回は巾木なし納まりパターンの紹介を続ける事にして、まずはコンクリート打放し壁の場合について考えてみる事にしましょう。
□コンクリート打放しの壁
コンクリート打放しの壁は色々な場所で採用されていて、その意図によって扱いがかなり変わってくるというちょっと特殊な壁だと言えます。
恐らくその扱いによって、巾木をどのように納めるかの考え方は大きく変わってくることになると思います。
積極的にコンクリート面を綺麗に見せようという場合には、恐らく建物のメインとなる場所で採用されることになります。
一方で、ここは仕上げないでコンクリートをそのまま見せることにしよう、という壁であれば、それは恐らく機械室などの裏方ゾーンになってきます。
その考え方の違いによって、コンクリートを打設する際に組み立てる型枠のスペックなどが変わってきて、当然見え方も正反対というくらいに違ってくることに。
当然壁に対しての床仕上材も、その考え方によって全然違ってくる事になります。
意匠的に美しく見せたいコンクリート打放し壁の場合は、床仕上材も石やタイルやフローリングなどが採用される事になるはずです。
しかし裏方の壁でコンクリートがある、という場合であれば、床仕上材もコンクリート素地や塗り床程度の仕上になってきます。
そうした仕上に関する考え方の違いによって、巾木の見せ方は変わってくる事になりますが、まずは裏方ゾーンでコンクリートを見せる場合について。
まずは床が素地であれば、それに合わせて壁も素地で巾木もなしという事になります。
床が塗り床であれば、そのまま100mm程度の高さまで塗り床を立ち上げる納まりか、もしくは入隅で塗り床を止めて巾木なしのどちらかです。
いずれにしてもそれほど見た目にこだわる場所ではないので、巾木なしで納めても特に問題はない場所ではないかと思います。
次に意匠的に見せるコンクリート打放し壁ですが、この場合は意匠的な見せ場である場合が多く、床仕上材は色々なパターンが考えられます。
基本納まりは当然壁勝ち納まりになって、巾木をなしに設定することも可能になるので、それぞれの床仕上材ごとの納まりを見ていくことにしましょう。
まずは床仕上材が石の場合。
コンクリート壁に対してシール納まりになるので、特に難しい納まりになる事もなく、巾木もなしにして特に問題ない状態だと言えます。
というか、この関係で巾木を石にしたい場合の方が、壁のコンクリートに欠き込みが必要になるはずなので、恐らく余計に大変だと思います。
上図のような納まりの考えられますが、施工精度の問題により欠き込みのラインが綺麗に出ない傾向にある事と、コンクリート壁と巾木の取合いがシールになる事などがあります。
もちろん可能ではありますが、見た目としても巾木だけ石というのは唐突な感じがあるので、あまりお勧めでは出来ない納まりだと思います。
コンクリート打放しの壁に対して床仕上材毎に納まりのパターンを、という感じで進めていくつもりでしたが、少し長くなってしまいました。
ちょっと中途半端な切れ方になってしまい申し訳ありませんが、違う床仕上材の納まりについては次回に続くことにします。