巾木の中で最も一般的な納まりである「ビニル巾木」について前回は取り上げてみました。
見た目としては「別に普通…」という感じのビニル巾木ですが、納まりとしては非常にシンプルな感じでになって、後から施工出来るというメリットもある。
そうした理由から、多くの部屋で採用される事になるはずです。
事務室や倉庫などでは壁面をそれほど目立たせる必要がないので、巾木の見せ方は「普通」で全然問題はありません。
逆に特殊な巾木納まりにして巾木だけが目立っても仕方がないので、こうしたシンプルな巾木が採用されるのでしょう。
一般的な巾木仕上のパターンについて今まで説明をしてきましたが、今回はその最後という事で、床仕上材をそのまま巾木とする納まりを紹介しようと思います。
床仕上材をそのまま巾木まで立ち上げようとする場合、その納まりを考えると、それが出来る床仕上材は割と限定される事になるのが分かります。
床に貼った仕上材をそのまま90度曲げて巾木にする訳ですから、ある程度仕上材としての柔らかさはどうしても必要になってきます。
そうして絞っていくと、以下のような床仕上材であれば巾木まで仕上げる事が出来る、という事が分かってきます。
・長尺塩ビシート
・塗床
これ以外の床仕上材でも巾木と床仕上材が同じになる場合はあります。
例えば床仕上材が石で巾木も同じ石にする場合などがありますが、そうした納まりを指して「床材立ち上げ」とはあまり言いません。
床仕上材をそのまま立ち上げる納まりではなく、一般的な床仕上材と巾木の関係になっているからなのかも知れませんが、今回は上記の二種類だけを紹介していこうと思います。
まずは長尺塩ビシートの納まりですが、基本的には下図のような関係になります。
床仕上材をそのまま巾木まで立ち上げる、というのはこのような意味で、先ほど紹介した床仕上材が石の場合とは少し違うことが分かるかと思います。
床仕上材の小口が見える納まりになるので、そこを隠す為の見切り材がどうしても必要になるのですが、これは既製品がたくさん用意されているので選定には困らないはずです。
こうした納まりにする事で、例えば床の上に水がこぼれた場合でも、床の下に流れてしまいにくい状態にすることが出来ます。
また、床仕上材を折り曲げて納める事になるのですが、当然入隅部分にはある程度のRがつく事になるので、ゴミや埃がたまりにくく清潔感があるというメリットもあります。
このようなメリットがあることから、トイレや病院の処置室や手術室などの巾木で、床材立ち上げの納まりを採用する場合が多いです。
見た目としてはそれ程美しく見える訳ではありませんが、それでも性能を重視するとこうした納まりになるのではないかと思います。
次に塗床の場合の納まりですが…
塗床の場合は床仕上材である塗装材を巾木までそのまま塗ってしまう、という納まりになります。
防塵塗装などの仕上はそもそも機械室などで多く採用されていて、そうした部屋の巾木で床材立ち上げ納まりが採用される事になります。
外部ではないけれどある程度は床に水がかかるとか、清掃などで水を流していく用途の部屋というのは、建物の中で結構あったりします。
そうした部屋の巾木であれば、塗床を立ち上がり部分まで施工して納める、というようなパターンになる事が多いはずです。
床に水がかかる恐れがある場合、床まで石膏ボードを貼っていく事はかなり危険です。
コンクリートの立ち上がりを作ってそこにLGS+石膏ボードの壁を建てていく、という納まりの考え方をする方が無難だという事になるのだと思います。