前回は床仕上材と壁仕上材との取合い部分についてのまとめという事で、以下のような項目について簡単に説明をしてみました。
・LGSと床コンクリート段差
・巾木の役割
・巾木の種類
・出巾木と入巾木
簡単にまとめたつもりが説明としてはちょっと長くなってしまい、二分割の説明という状況になってしまいましたが…
今回は巾木関連の話の続きという事で、巾木の高さについての話から初めてみたいと思います。
□巾木の高さ
巾木の高さは特に決まった数値がある訳ではなく、壁との関係によってバランスを見ながら決めていく必要があります。
とは言っても既製品で用意されている巾木であれば自由に設定出来る訳でもなく、ラインナップの中から選定していく必要があるのですが…
そうした既製品などを調べていくと60mmが一般的ではないか、という感じになります。
出来るだけ巾木を目立たせたくないという思いが意匠設計者にある場合には、40mmという商品もあるので、そちらを選定した方が良いかも知れません。
あまり低すぎると巾木の役割を果たさなくなるので、そういった意味では既製品の巾木の最小は40mmになっています。
やはり20mmなどの巾木では低すぎるのでしょう。
□巾木をなしで納める場合
場合によっては意匠的に巾木をなしにして納めたい場合もあるでしょう。
その場合は壁が汚れるなどのリスクを承知で採用する必要がありますが、そもそも「後で壁が汚れるけど巾木なしで良い」という選択肢は、個人的にはないと考えています。
これはちょっと建物を利用する方の事を考えてなさすぎで、さすがに意匠設計者が意匠を優先という考え方を持っていても、その選択はしない方が良いです。
ただ、壁仕上材によってはそうしたリスクを取らずに巾木を設けない納まりが実現出来るので、以下の壁仕上材であればそうした検討をするのも良いかも知れません。
・壁仕上材が石の場合
・壁仕上材がタイルの場合
・壁仕上がコンクリート打放し仕上の場合
要するに「汚れにくくて床取合いもそれほど悪くない壁仕上」であれば、巾木がなくても問題なく納まることになる、という話ですね。
逆に巾木を設けると納まりが変になる場合もあるので、壁と床との関係をどう見せたいのかを良く確認しておく必要があります。
□和室の場合
和室の場合は床仕上材が畳という事になりますが、その場合はちょっと特殊な考え方として「畳寄せ」と呼ばれる取合い納まりになります。
これは和室の壁や建具チリの納まりによって、畳の形状が凸凹にならないように、という目的で入れられる調整材の様なイメージですね。
上図のような納まりでは、巾木としての役割のひとつ「壁を汚れから守る」という目的を果たすことが出来ないと思ってしまうのですが…
割と昔から和室の一般的な納まりはこのような関係になっているので、特に問題なく機能しているということなのでしょう。
という事で、床仕上材と壁仕上材との取合い部分の納まりについて、ざっとではありますがおさらいという感じで説明をしてみました。
細かい調整が多い部分だとは思いますが、こうした調整が出来ている建物は最終的な見映えが美しいものになる場合が多いです。
「神は細部に宿る」という有名な言葉もありますよね。
細かい部分だからあまり気にせずに大きな部分だけを意識して建物の設計や施工を進めても、結局はあまり思ったように美しく仕上がらない、という事なのかも知れません。
私自身のスキルはそこまでの次元にいないようで、上記の言葉を本当に実物を見て納得するレベルで実感したことはありませんが…
それでも言わんとすることはよく分かるので、限られた時間の中で許される限り、細かい部分の納まりにも意識を向けていくことをお勧めします。
もちろん細かい部分について検討をする為には、構造体などの大まかな部分の検討がきちんと完了している必要があります。
なので、そうは言っても細かい部分だけを見ていく訳にはいかない、というあたりが現実としては難しいところです。
そのあたりを調整しながら仕事をしていく必要がある、という部分が難しいところなんですよね。
…と、あまり結論が出ていないあたりの話になってしまいましたが、これで巾木関連の説明は締めくくりたいと思います。
まだまだ説明したい話は色々あるので、次回のカテゴリでは壁と天井との納まりを色々と取り上げてみたいと考えています。