前回は巾木の高さについての話をいくつか取り上げてみました。
正直なところ、巾木の高さというのはあまり意匠的にも納まり的にも深く考えなくて大丈夫な部分ではありますが…
それほど難しい話でもないので、考え方をおさらいしておくのも悪くないと思います。
例えばトイレのブースパネルと通常の壁などでは巾木の納まりが違っているけれど、仕上材と高さを揃える事で統一感が出るとか。
巾木上に取り付ける消火器BOXの取り付け高さの考え方などについても話をしましたが、これは設計者と施工者とで考え方が若干違う部分でもありました。
巾木についての話はそろそろ終わりになりそうですが、最後に「巾木なし」の納まりがどのような場面で実現するか、というあたりについて考えてみたいと思います。
巾木を取り付ける主旨については今まで何度か紹介してきました。
・施工時に出来てしまう隙間を隠すため
・壁を汚れから守るため
上記のような機能が巾木には期待されるため、そもそも「巾木をなしにしたい」という考え方はそれ程多くは出てこないと思います。
巾木というのは昔からあるもので、昔からあるものにはきちんと存在意義があって簡単にはなくすことが出来ない、という考え方ですね。
しかし建物をどう見せるのかを検討するのは意匠設計者の役目であり、そうした中で出来れば床と壁の間に違う仕上材を入れたくない、という要望が出てくる事は充分に考えられます。
余計なものはなくしていく。
こうしたシンプルな考え方を突き詰めていくと、場合によっては巾木が邪魔に感じてしまう場合があるのかも知れません。
施工者側の感覚で話をすると、やはり床と壁の取り合い部分を隠すという目的で巾木を設置する訳ですから、その巾木をなくしたいという発想はなかなか出てきませんが…
まあこれは設計者と施工者の立場の違いによる感覚の違いなので、どちらが良いとかどちらが悪いなどの話ではありません。
ただ、巾木をなくすという事は、上記で挙げた巾木の役割を放棄するという事になりますから、見た目としても機能としても、あまり良くない状況になってしまう可能性があります。
そのあたりの話については、設計者もある程度そのリスクを知っておき、そのリスクを許容するかどうか考えてみる必要がありますが…
場合によってはそうしたリスクがそれ程多くない納まりパターンもあるので、今回はそうした納まりのパターンにどのようなものがあるのかを考えてみたいと思います。
□石張りの壁
壁仕上材を石にした場合には、その部屋のグレードなどをトータルで考えていくと、床仕上材も石になっている場合が多いです。
特に決まりがある訳では全然ないのですが、少なくとも床仕上材が長尺塩ビシートやビニル床タイルなどである可能性はかなり低いでしょう。
床仕上材が石で壁仕上材も石である場合、巾木をどうするかという考え方はあまりなく、壁仕上材をそのまま床まで下ろしていく納まりが一般的になります。
上図の納まりを見て頂ければ分かりますが、この納まりであれば、わざわざ巾木をどのように見せるかを考えずに壁として見せた方が良いですよね。
壁仕上材が石であれば、床掃除によって壁が汚れてしまうという懸念もなくなるし、床との取合いもシール納まりになって見た目としても問題ない、という感じになります。
□タイル張りの壁
壁仕上材がタイルの場合も、先ほど書いた石張りの場合と同様に、巾木という考え方が必要ない納まりになります。
似たような話になってしまいますが、壁仕上材がタイルであれば床仕上材も石やタイルなどになってくる可能性が高いです。
そうなると上図のような関係で納まっていく事になるので、壁仕上材が石張りの場合と同様に、巾木をどう見せるかはあまり問題ではなくなります。
床が勾配になっている場合があるので、床仕上げレベルが最も下がった位置に合わせて、一番下のタイルのレベルを決めておく、というのが注意点であるくらいでしょう。
巾木をなしにする場合についての話はもう少し続きます。