前回は木製巾木の特徴と、床仕上材によって少しずつ変わってくる木製巾木の納まりについて色々と考えてみました。
床仕上材の伸び縮みを考慮して床勝ち納まりにしてみたり、床仕上材との関係を考慮して巾木勝ちにしてみたりと、納まりの選択肢は色々です。
施工の大変さと最終的な見た目の良さを意識しながら納まりを決めていく、という検討は、建築の非常に面白いところではないかと思います。
もちろん中には結果として自分が思ったようにならない場合もあるのですが、上手くいった場合も含めてそれらは全て経験になっていくので、決して無駄なことはありません。
そうした経験を積んでいく為には、何も考えずに何となく納めるのではなく、自分で色々と納まりを考えて決めていく事が重要になってきます。
自分の考えがないまま進めても、結果が良かったのか、それとも良くなかったのかが分かるはずもないので、経験にはならないんですよね。
それではあまりにも勿体ない。
と言うことで、まずは納まりについて自分の考え方を持つことが出来るように、色々な納まりの考え方をここでは説明していこうと思っています。
私の考え方も間違っている可能性はありますが…
間違いのない情報を発信することが出来るまでは何も書かない、という考え方をしていると、恐らくずっと書き始めることが出来ないし、誰も書くことが出来ないはずです。
それでは困るので、多少の間違いはあるにしてもある程度大まかには合っているのならば、色々と説明しても大丈夫ではないかと思っています。
今回は引き続き巾木納まりの話を進めていくことにして、タイルを巾木として採用した場合についての納まりや考え方などを説明していくことにしましょう。
タイルを巾木として採用しようとする部屋は、基本的に床仕上材としてタイルを採用している部屋である場合が多くなってくると思います。
巾木と床仕上材との組み合わせについての話は、石巾木の時も木製巾木の時にもあって、毎回同じような感じになってしまいます。
床が石でもフローリングでもタイルカーペットでも、巾木としてタイルを選定するのはかなり唐突な感じになってしまうので、恐らくそうした組み合わせを選択する場合は少ないです。
床仕上材との組み合わせで考えていく中で、結局は床仕上材としてタイルを貼っている部屋で、巾木もタイルを採用する、という流れになってくる場合が多いです。
また、壁全体がタイル貼りである場合にも、壁のタイルがそのまま床に取り合ってくる事になるので、巾木がタイルになると言えます。
という事で、まずは以下のような納まりパターンが考えられる事になります。
・床タイル-巾木タイル-壁塗装など
・床タイル-巾木タイル-壁タイル
まずは巾木だけタイルの納まりについて考えてみると、下図のような関係ですね。
ここで注意したいのが巾木タイルの天端。
一般的にタイルは連続して貼っていく事を前提としている為、タイルの小口が綺麗に仕上がっている必要性がありません。
しかし上図のようにタイルを途中で止める納まりにする場合、小口がしっかりと見えてしまう関係になってしまうので、出来れば小口を綺麗に見せたいところです。
タイルというのは基本的に既製品なので、場合によっては小口が仕上がっているタイルがない場合もあって、そうなると巾木タイルというのはあまりお勧め出来ないかも知れません。
これらの事を踏まえた理想的な巾木タイルは、下図のような関係になると思います。
もしくは巾木部分を少し壁から面落ちさせて入巾木納まりとするか。
こうすればタイルの小口は隠れることになるし、タイルの厚み分だけ巾木が出てしまうという問題も解決する事になります。
ただ、石膏ボードを切り欠いた部分との取合いはシールになるので、余分な作業が発生して少しコストがかかってしまうという問題も。
このあたりは見せ方やコストなどを総合的に判断していく事が求められます。
そうやって考えていくと、わざわざ巾木をタイルにしなくても良いか…という選択肢があることにも気が付くはずなです。
なにも床タイルの部屋で必ず巾木をタイルにする必要がある訳ではなく、金属巾木など選択肢は色々あることを知っておいた方が良いかも知れません。