今まで説明をしてきた床・壁・天井の納まりを踏まえて、このカテゴリでは床と壁の取合い納まりについて説明をしていこうと考えています。
床と壁の取合いというのは具体的にどんな部分なのかというと、いわゆる「巾木(はばき)」と呼ばれる部分になります。
上図は左側が床フローリング+木製巾木、右側がタイルカーペット+ビニル巾木、壁はLGS下地+石膏ボードという納まりで、よく見かける関係になっています。
こうしたシンプルな納まりであればそれほど検討することもないのですが、実際にはイレギュラーな納まりは多々あるので問題なく色々検討出来ます、とここでは書いておきます。
床も壁も一般的な部分ではそこまで複雑な納まりにはならないもの。
しかしそれぞれの納まりが交差する部分では、どうしても少しばかり納まりが複雑になってしまう傾向にあります。
そうした複雑な部分を押さえておくことが出来れば、建築の納まりとしてはほぼ問題ないという状況まで持っていくことが出来ます。
図面での検討段階で納まりが明確になっていると言うことは、施工段階の流れがスムーズに進む可能性が高いという事を意味します。
施工者として納まりを検討する際に目指すのはそのあたりになるので、施工が思った通りに進むようにしっかりとした検討を進めていきましょう。
一方設計者の立場であれば話は少しだけ違ってきます。
細かい納まりについて知りすぎると「これでは下地が組めないか…」というあたりに気が付いてしまい、自由なデザインがやりにくくなる可能性があるんですよね。
とは言っても納まりを知らない状態で建物をデザインするのは良いこととは言えませんので、ある程度の納まりは知っておいた方が有利でしょう。
あまりにも納まりを知らないで施工者と打合せをすると、すぐに見抜かれて「何も知らないのか」という感じになってしまう事もあるので、そこまでにはならない方が良いと思います。
結局どっちなの? と言われてしまいそうな書き方をしていますが、ある程度納まりの知識を持ちつつも、デザインとしての要望は設計図に表していく、という感覚が丁度良いと思います。
デザインを重視して難しそうな納まりであっても、施工段階で施工者と打合せをしていく中で解決する、という場合も結構多いですから。
こうした床納まりと壁納まりの取合い部分納まりについて、これから具体的な納まり例を出してみたり注意点を説明していこうと思います。
まずは床と壁の関係という事で、以下の様な状況の納まりについて考えてみたいと思います。
・壁はLGS+石膏ボードの壁
・壁の片側は長尺塩ビシート
・壁のもう一方は石張り
この状況でどのような事を検討したいかというと、コンクリートに段差を設ける必要があるはずで、それを壁に対してどこに設定するか、というあたり。
これは実際に断面図を作図してみると分かってくるので、ここでまずはサンプルとして断面図を段階的に作図してみることにします。
まずは石張りの床に合わせてコンクリート天端を-70mmに設定してみました。
次にLGS+石膏ボードの壁を立てていきます。
石を張っていく側に石の表現をして、反対側には長尺塩ビシートを、ちょっと厚みがないので分かりにくいですが表現してみます。
下げた床コンクリートと長尺塩ビシートとの間があいているので、実際にこうなると長尺塩ビシートは施工出来ず、それでは困るので床コンクリートを上げます。
この状況で疑問として出てくるのが、床コンクリートをどこから下げておくと納まりが良いのか、という話になってきます。
今回のように「床コンクリートの段差をどこに設けるか」については、いくつかの見解があるので、それぞれの納まりは次回に紹介していくことにします。
まずは上図の状態からどのように納めるのが良いかを考えてみましょう。