床の納まりを検討する際に、床仕上材の厚みだけではなく、もっと他に床コンクリートのレベルを下げておく必要がある項目があります。
という話を前回は取り上げて、幾つかの要素で床コンクリートを下げておく必要がある、という項目を紹介していきました。
・アスファルト防水
・OAフロア
・床暖房
・浮き床
上記のような性能を必要とする部屋では、床仕上材がどのようなものになるかを確認する以外に、それぞれの性能を確保する為の調整が必要になってきます。
部屋として必要とされる性能には色々な種類がありますが、それぞれの納まりをきちんと押さえておき、後で困らないような床コンクリートレベルの設定が施工者には求められます。
と言うことで上記で紹介した特殊な床下地について上から順番に説明していくことにして、まずはアスファルト防水を取り上げてみることにします。
アスファルト防水というのは、読んだままですがアスファルト系の防水仕様を指しています。
床仕上材の下にアスファルト防水層を設けることで、その部屋で使用する水が下階に漏れていかないようになっていく、という役割を持っています。
なので、アスファルト防水が必要となる部屋の条件としては、たくさんの水を使用して、その水が床に常時流される部屋、という事になります。
具体的に言えば以下のような部屋になるかと思います。
・浴室
・シャワー室
・厨房
・外部
トイレなども水を使用すると言う意味では同じではありますが、常時水を床に流しているかというと、そこまでではないですよね。
例えばトイレの床がタイルなどになっていて、毎日ホースで水を流してブラシでゴシゴシと洗うような場合はアスファルト防水が必要かも知れませんが…
今時そんなトイレはほとんど存在しなくて、大抵の場合はモップで拭いて終わりになりますから、基本的にアスファルト防水の性能までは必要ありません。
もちろん水を使う部屋であることは間違いないので、念のためにアスファルト防水をしておく、という考え方もアリだとは思います。
しかし、こうして万が一に備えすぎるとコスト的に無駄が増えてしまう為、実際の運用を考えて不要と感じるのであれば、それは恐らく不要が正解なのだと思います。
「ちょと心配だから」という理由でオーバースペックにしていく、というやり方は恐らく私を含めて誰にでも出来る仕事だと言えるでしょう。
しかし、その部屋に求められる性能を正しく理解して、さらにコストを考えてその部屋の仕様を決めていく、というのはやはり建築のプロにしか出来ない仕事。
必要な性能はきちんと残しておいて、不必要だと思われる性能は自信を持ってなくしていくことが出来るのは、やはり設計者が持っている能力だと言えます。
さて、そんなアスファルト防水の基本的な納まり断面図はこんな感じになります。
上図は床をタイルにしている納まりですが、まずは床コンクリートを大きく下げておき、そこにアスファルト防水を施工していくことになります。
アスファルト防水を施工した後は、防水層を保護する為に押さえコンクリートを打設して、その上に床タイルを張っていく、という流れになります。
アスファルト防水の厚みは10mm~15mm程度なので、上図のように200mmも床コンクリートを下げなくても良いのではないか。
そう思ってしまうかも知れませんが、一般的にアスファルト防水を施工する部屋の床コンクリートは150mmとか200mm程度は下げておきます。
それはなぜかというと、アスファルト防水を施工する部屋では、その部屋に流している水を排水するための排水溝が必要になってくるからです。
床の上に流された水はどこかに排水する必要がありますが、その為にはまず水をどこかに集めておく必要があって、その為に排水溝を設ける訳です。
排水溝に集められた水は、溝の中にも勾配を設けて最終的には排水目皿などを用いて排水されていくことになります。
ちょっと言葉だけの説明では分かりにくいですね…
断面図に排水溝を記入してみるとこのような感じになっていて、排水溝にもある程度の深さが必要になりますから、やはり200mm程度の高低差が必要になるんです。
このあたりの排水溝深さなどは、部屋の広さなどによって変わってくるものですから、断面図だけで判断するのはなかなか難しいものです。
アスファルト防水についての話はもう少しだけあるので、次回は引き続き排水溝の床コンクリートレベルの話を進めていこうと思います。