前回までの話で、コンポジションビニル床タイル・単層ビニル床タイル・複層ビニル床タイルが持っているそれぞれの特徴について説明を進めてきました。
上記のビニル床タイルは色々な特徴を持っていますが、施工方法としては床コンクリートに接着剤で固定していくという通常の納まりになっています。
今回紹介する置敷きビニル床タイルは、今まで紹介してきたビニル床タイルとは少し違い、材料の特徴というよりも施工方法に特徴がある床仕上材になります。
□置敷きビニル床タイル
置敷きビニル床タイルというのは、これも読んだままの性能ではありますが、強力な接着剤で床にがっちりと固定しないタイプのビニル床タイルになります。
強力な接着剤を使わない事に何のメリットがあるのかというと、いくつか理由があるのですが、簡単に言ってしまうと「床を簡単に剥がすことが出来る」事がメリットになります。
張りやすく剥がしやすいというあたりにメリットがある訳です。
基本的に床仕上材は剥がれてしまわないよう下地にしっかりと固定するものです。
しかし簡単に床仕上材を剥がす事がメリットになるということは、通常の場合と少し違ったシチュエーションになっているという事です。
それがどのような状況なのかを考えてみると…
賃貸住宅とか貸事務所で最初から用意されているフローリングを傷つけたくないから、その上にさらに置敷きビニル床タイルを敷いておくとか。
商業施設に入るテナントの床仕上材として採用して、テナントが移転する際には下地を傷つけず簡単に剥がすことが出来た方が助かるとか。
そうした「一時的な床仕上材」として考えると、床下地に接着剤で固定しない置敷きビニル床タイルというのは使い勝手が良い床仕上材だと言えます。
あともうひとつの用途としては、事務室などでOAフロアを採用した場合の床仕上材としても、この置敷きビニル床タイルは採用されます。
OAフロアというのは、床仕上天端と床コンクリートとの間に配線スペースを設ける為の床下地ですから、配線の為に定期的に床下スペースにアクセスする必要があります。
そうした性能を持つ床なのに、例えば長尺塩ビシートなどで床下地に接着剤で固定してしまうと、せっかくOAフロアにした意味が全然ありません。
また、形状の事も考えていくと、長尺塩ビシートのようにひとつの床仕上材が大きい場合には、部分的に床を剥がしてなんて事が全然出来ません。
そうした使い勝手を考えると、まずは接着剤を使わずに敷いていく事が出来て、なおかつ大きさが500mm×500mm程度の置敷きビニル床タイルが重宝するんです。
そうした性能を持っている床仕上材としてタイルカーペットもありますけど、タイルカーペットまでグレードを上げなくても良い場所でこうした置敷きビニル床タイルが採用されます。
□薄型置敷きビニル床タイル
薄型置敷きビニル床タイルも先ほど紹介した置敷きビニル床タイルと同様、強力な接着剤を使わないため張りやすくて剥がしやすい塩ビタイルになっています。
考え方は薄型置敷きビニル床タイルも置敷きビニル床タイルも全く同じなのですが、名前の通り薄型置敷きビニル床タイルは4mm未満の製品を指しています。
厚みがそれほどない薄型置敷きビニル床タイルを採用するメリットとしては、既にある床仕上材の上から張ってしまうことが出来るという点が挙げられます。
これはなかなか便利だと思います。
例えば長尺塩ビシートなどであれば、床コンクリートに対してがっちりと接着剤で固定されていますから、剥がす作業が結構大変になるんです。
しかも強力に接着されているために、剥がした際に下地を痛めてしまう場合が多く、そうなってしまうと剥がした後で下地をモルタルで補修する手間の出てきます。
そうした点を考えると、例えば既に床に長尺塩ビシートが施工されている場所でも、その上から2mm程度の薄型置敷きビニル床タイルを張ってしまうというやり方が出来ます。
しかも床が汚れて来たら、薄型置敷きビニル床タイルだけは簡単に剥がすことが出来るので、一旦剥がして新しく張り替えることも簡単。
こうした特徴を考えると、賃貸住宅で居住者が退去した後のリフォームなどで活躍する床仕上材だと言えるかも知れません。
すでに施工してある床仕上材を剥がすのも手間とコストがかかりますから、それをしないで上から床を張ってしまうというのは画期的なアイデアですよね。