建物はその場所によって床仕上材のグレードを色々と使い分けていき、その床仕上材によって構造体のレベルが変わる場合がある、という話を前回は取り上げました。
こうした根本的な納りについては、間違えてしまうと影響が非常に大きくなってしまうため、出来るだけ早めに決定をしておいた方が後が楽です。
と言うことで、今回は床仕上材と構造体レベルの関係性について、もう少し具体的に考えてみることにします。
例えば床仕上に石を採用しようと考えている場合には、石を納める為に床コンクリートレベルを80程度下げておく必要があります。
石の厚みが足りないと人が乗った時に割れてしまいますし、コンクリートと石の間にもある程度施工の為のスペースが必要になるので、80程度のスペースが必要なんです。
断面図としてはこんなイメージになります。
こうした納りを考えると、床コンクリートを下げたけれど梁のレベルは下がっていないということはあり得ませんので、梁のレベルも80下げておく必要がある事が分かってきます。
万が一梁レベルを下げるのを忘れてしまうと、30mm程度の石に対して梁の部分だけコンクリートがFL±0になってしまう関係になり…
これでは間違いなく床の石が施工できない状態になってしまいますし、梁の部分だけ違う床仕上材にする訳にもいかないので、そもそも床に石が採用出来ないということに。
そうなると床のコンクリートだけ80下げた事自体が無駄になってしまうという、非常に残念な状況になってしまいますので、事前の検討が非常に重要になってきます。
床に石を施工するのは建物のメインになる場所が多いですから、そうした場所に「やっぱり石は張れません」となるのはかなり厳しいです。
厳しいという表現は少し曖昧な表現で、もう少しストレートな表現をしてしまうと、建築のプロとしてちょっとあり得ない結果というしかありません。
このあたりの検討は施工者側で進めることになりますが、梁のレベルは下の階の天井高にも大きく影響を与えますから、設計段階でも大まかには検討しておきたいところです。
そうしないと、結局は思ったよりも上階の梁が下がっているみたいな状況になってしまい、やむを得ず下階の天井を下げるなどの決断が続出することに。
これでは意匠設計者としても面白くないですから、ある程度上階の床レベルと梁を下げるかどうかについては把握しておいた方が良いでしょう。
天井高を確保する為に階高を少し上げておけば良かった…と思ってしまうシーンも、恐らくは色々やっていく中できっとあるはずです。
しかし、そうした階棚を調整する検討が実際に出来るかというと、時期にもよりますがなかなか難しいというしかありません。
基本設計段階では階高の調整をするという考え方もまだ可能かも知れませんが、少なくとも施工段階では間違いなく不可能になってしまいます。
そうした事情から、施工段階で「梁が下がっています」的な話になってくると、もう天井高を下げるしか方法がない状態になって、設計者としては妥協の連続という感じになります。
そうならない為にも、ある程度設計段階で床レベルと梁レベルを把握しておく方が、後々の事を考えると良いのではないかと思います。
ただ、実際に天井裏のスペースをどのように使って納めていくかという話は施工者側が検討することですから、設計者としては事前に検討しておくことが難しいというのが現実でもあります。
なので実際には、天井裏のスペースが厳しそうだけど施工が始まってから調整するしかないか、という感じで天井高を設定していくことになるとは思います。
設計段階で床仕上材による梁レベルを事前に検討をしておいた方が良いのは、意匠的に「この天井高さだけは譲れない」という部分です。
そうしたメインの場所に関しては、天井高を確保する為に構造設計者と調整して梁成を小さくする検討をしてもらうとか、設備をそこにあまり入れないようにするなどの調整が有効です。
事前にそうした調整をかけておくことで、施工が始まった段階でも大きな問題になることはなく、若干の調整で納める事が出来るようになります。
そのあたりは施工者が検討することではないか、と考える方もいるかも知れませんし、実際のところはその通りなのかも知れませんが…
計画していた天井の高さが軒並み実現出来ない状況になるのは嬉しくないはずですから、事前にざっと高さ関係だけでも見ておく方が良いと思います。