鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の納りでは、柱と梁の仕口部分を納める為に、SRC梁の主筋を通すための孔をSRC柱の鉄骨にあけておく必要があります。
なぜ鉄骨柱のウェブに孔をあけておく必要があるのか、という話は前回図面とあわせて紹介したので詳しい話はさておき…
今回は、鉄骨柱のウェブに孔をあける場合の検討項目にはどのようなものがあるのか、というあたりについて考えてみたいと思います。
まずはSRC梁について考えてみると、検討というか方針を決めておかなければならないのは、X方向とY方向どちらの主筋を上側に配置するかという点。
これだけではあまりピンと来ないかも知れないので補足をすると…
鉄筋コンクリート造(RC造)でも同じ検討が必要になるのですが、まずは鉄筋のかぶりを考慮した梁の標準断面図を描いてみると、このような感じになると思います。
一般的なかぶり厚さ40を確保することを考えると、このような鉄筋の配置になることが予想される訳ですが、実際にはこの形状ではNGなんです。
なぜかというと、実際の梁はX方向にもY方向にも配置されていますから、それぞれの梁が直交する部分で主筋同士が干渉してしまうことが確実だからです。
鉄筋のプロであれば上図のような恥ずかしいことはしないはずですけど、図面だけを見ていて経験が少ない方であれば、そうした検討をする可能性もある訳です。
これは梁の主筋とスターラップを実際に見ると一目瞭然で、図面だけで検討をしているとなかなか気が付かない事ではないかと思います。
もちろん一度経験してしまえば済むだけの話ではありますが。
では実際にはどのように主筋を納めていくのかというと、お互いの主筋を伸ばすことが出来るようにレベルを主筋の分だけずらしていくことになります。
上端筋も下端筋も同様にずらすことになり、なおかつ鉄筋のかぶりも考慮していくと、交差することを考えなかった場合の鉄筋よりも若干小さくなることが分かります。
この関係は同じ向きに配置されている梁全てに適用していくことになるので、例えばX方向の主筋を上に配置してY方向の主筋を下に配置する、などのルールを決めることになります。
このあたりは構造設計者と施工者を交えた調整項目になるかと思います。
鉄骨鉄筋コンクリート造の柱と梁の仕口納りでこのような話をしたのは、鉄筋を上にするか下にするかで鉄骨柱にあける孔のレベルが変わってくるからです。
まずはSRC梁の構造体天端レベルから主筋がどの程度下がった位置に配置されるのか、という基準を決めておかないと話は先に進まないし、進んだとしてもすぐに戻ってしまいますから。
と言うことで、鉄骨柱に対して主筋を通す為の孔をあけるには、まずSRC梁の構造体天端からどの程度下げた位置に孔が必要か、という基準を設けておく必要があります。
具体的な例を挙げてみると…
梁成800のSRC梁で、鉄筋のかぶりを40mmとし、主筋をD19、スターラップをD13とした場合の主筋位置はこのような関係になります。
上図から読み取ると、X方向の主筋用孔レベルは構造体天端-65mmとなり、Y方向の主筋用孔レベルは構造体天端-86mmという事になります。
下端筋については同様に、X方向で構造体天端-714(梁成800-86)となり、Y方向で構造体天端-735(梁成800-65)となります。
うーん…具体的な数値を出しながらの説明だと一気に読みにくくなりますね。
私の説明が上手くない事は分かっているのですが、これ以上どうにもならないので、上記の説明は図面を見ながらじっくりと読んで頂けると助かります。
こうして交差するSRC梁については、主筋のレベルをずらすことで鉄筋を納めることになるので、それを想定した孔レベルを検討していく事になります。
当然構造体の天端レベルも色々ありますから、構造体天端と梁のかかる方向、梁成がいくつかなど様々な数値の関係を見ながら検討を進めるしかありません。
これは言うまでもなく手間がかかる作業になりますが、こうして情報を整理しながら地道に進めていくしかない作業でもあります。
こうした検討と調整は施工者側で進めていく業務になりますから、特に施工者側で仕事をしていく方であれば、なぜそうなるのかを含めて覚えておきましょう。