鉄骨造(S造)の接合部納まりとして前回は鉄骨柱と鉄骨梁の接合部を紹介し、構造的に「剛接合」と呼ばれる接合になっている、という話を取り上げました。
この「剛接合」という考え方は、構造的な観点では非常に重要な考え方になるので、鉄骨接合部の基本納まりとしてしっかりと覚えておく事をお勧めします。
柱と大梁というメインフレームを構成する際には、剛接合で鉄骨をつないでいく方が効率が良い為、柱と大梁は剛接合されることが多いです。
…というか、柱と梁は基本的に剛接合だと覚えてしまっても良いくらいの割合で、剛接合になっているはずです。
そのあたりの判断は構造設計者がする訳ですが、構造図を見てそれが判断出来るように、接合部の考え方についてはしっかりと押さえておきましょう。
そして今回紹介するもう一つの鉄骨の接合納まりを押さえておけば、鉄骨接合部の基本的なパターンとしては網羅出来た事になります。
もちろん大まかに2パターンあるだけで、実際のバリエーションは非常に多彩ではありますが、とにかくもう一方の納まりについて今回は取り上げてみる事にします。…
剛接合である柱と大梁の接合部に対して、今回紹介するのは大梁と小梁の接合部納まりで、剛接合に対して「ピン接合」と呼ばれる接合パターンです。
なぜ「剛接合」に対して「ピン接合」なのか。
今まで当たり前だと思って特に疑問を持たずに使っていましたが、よくよく考えてみると「ピン接合」って変な言葉ですよね。
少なくとも「剛」の反対語が「ピン」であるのはしっくりと来ません。
ピンという言葉には何か特別な意味があるのかも…と思って調べてみましたが、なかなか正解にたどり着きませんでした。
とは言ってもここで悩んでいても話が始まらないので、これは私の宿題として残しておくことにして、話は先に進めてしまいましょう。
大梁と小梁の接合部ということですから、平面的な位置で考えてみるとこのあたりです。
大梁と小梁の関係なのでこれは自然とそうなるのですが、H鋼の断面方向同士で接合されるのではなく、部材が直交する方向で接合することになります。
場合によっては大梁と小梁の接合部が剛接合になる事もありますが、特に記載がない場合は基本的にピン接合と考える事になります。
これは構造図の表現で判断する事になり、表記としては以下のような感じになります。
この微妙な違いによって、大きく納まりが変わってくる剛接合とピン接合を区別するのは危険ではないかと正直思ってしまいます。
もちろん構造設計者も同じことを考えているはずで、大梁と小梁の接合部を剛接合にする部分には、もっと分かりやすい記号を付ける場合が多いです。
これなら間違えなくて済みますよね。
どのような仕事でも同じだと思いますが、トラブルの原因となるのは曖昧な表現や言葉である場合がほとんどです。
なので、些細な表現の違いから後々で大きなトラブルにならないように、構造図でも出来るだけ明確な表現をした方が良いと思います。
次に納まりの話になりますが…
直交する鉄骨梁同士をどうやって接合するかというと、大梁側にボルト接合が出来るように板を出しておき、小梁側のウェブにボルトで固定するという納まりが一般的です。
大梁から鉄板を出す際には、H形の鉄骨ですから、フランジとウェブに囲まれた範囲を溶接で固定していくことになり、強度を確保する為反対側にも同じように鉄板を入れます。
小梁を固定する為に出す鉄板を「ガセットプレート」と呼び、補強の為に入れる鉄板を「リブプレート」と呼び、図面で表現すると下図のような関係になります。
こうして大梁側に小梁を取り付ける準備をしたところで、ちょっと長くなってきたので次回に続く事にします。