建物の地下にある堅い地盤を支持層と呼び、建物の荷重をその支持層まで伝達することによって、建物は何十年も同じ場所に建ち続けることが出来ます。
地震でもないのに建物が傾いた、というようなニュースが時々ありますが…
そうした建物は支持層まできちんと建物の荷重を伝えることが出来ていない、という単純だけど深刻な現実に直面しているはずです。
原因は「建物の荷重が支持層まで届いていない」の一点しかありませんが、そうした状況になってしまう要因はいくつか考えられます。
ボーリング調査を行う場所を分散させることによって、調査を行っていない場所の支持層を想定していくことになりますが、支持層がその想定から大きく外れている場合も時にはあります。
部分的に支持層が深くなっていたり、逆にボーリング調査を行った場所の支持層が部分的に浅くなっていたりなどで、支持層の想定が外れてしまう訳です。
それは実際に杭を施工する段階で発覚することになります。
杭を施工する場合、きちんと杭の先端が支持層まで到達したかを電気信号によって確認していく事になるので、所定の深さまで杭を施工しても支持層に到達していない事がその時点で分かります。
そうなると、杭をさらに深く打ち込んで基礎もそれに合わせて深くするとか、その杭は構造体として使わず別の場所に新しく杭を打ち込むなどの方策を考える必要があります。
いずれにしてもそうした状況になると大変ですが、施工者はこうしたトラブルを解決する為の高い技術を持っていますので、構造設計者と調整しながらそれでも施工を進めていくことになります。
ちょっと変な表現になってしまいますが、施工者というのは問題が発生した時こそ力を発揮するもので、そうした自負をもって働いている施工者の方は結構たくさんいると思います。
全体に対しての割合は分かりませんけど、自分でそう公言している方や、仕事ぶりを見てそう感じる方はかなり多いと私は思っています。
…と、ちょっと話がそれてしまいましたが、今回は建物の荷重を支持層まで伝達する為の「杭」を取り上げてみたいと思います。
杭の種類はいくつかありますが、これも基本的に構造体ですから、他の構造体と似たような材質の選択肢になっています。
・木杭
・コンクリート杭
・鋼管杭
結局は他の構造体と同様に「木」か「コンクリート」か「鉄」か、ということになりますが、一般的にはコンクリート杭が採用される場合が多いです。
木を杭として使っても大丈夫なのか、と思われる方もいるかも知れませんが、地中で空気に触れない場合木は腐食していかないものなんです。
とは言っても木杭が主に使われていたのは結構昔の話になり、今の時代わざわざ木杭を採用するメリットはそれほど多くはありません。
そもそも長さが足りない場合が多いですからね。
古い建物を解体して新しい建物を建てる場合などで、昔の木杭が新しい杭に干渉する、などの状況で木杭に接することになる程度だと思います。
近年主に採用されるコンクリート杭であっても、その工法によって考え方は以下のように大きく分かれることになります。
・既製コンクリート杭
・場所打ちコンクリート杭
工場で製作してきた杭を現場で打ち込むのか、それとも穴を掘ってそこに現場でコンクリートを流し込むのか、という違いです。
既製コンクリート杭の場合、工場で製品を作るので、製品の性能管理が容易で現場での施工が早いというメリットがあります。
その反面、あらかじめ杭の長さを決めて発注する必要があるので、納品までに時間がかかる事と、現場で長さを変えることが出来ないというデメリットがあります。
場所打ちコンクリート杭の場合は、当然現場での施工になりますから、施工精度の管理などが工場に比べると大変という問題がありますし、既製品を打ち込むのに比べると時間もかかります。
ただ、現場でコンクリートを流し込む訳ですから、支持層が出てくるまで掘り進めていくことが出来る、というメリットもあります。
その場合は鉄筋を長くのばして構造設計者との調整が必要になってきますが、既製品の杭に比べると自由度は比較的高めになっています。
杭工事を進める際の工法は色々ありますが、ここでその工法や使用する重機などを紹介することはやめておきます。
・支持層が深い場合は杭を採用する必要がある
・その杭を基礎につなげる事で建物の荷重を支持層に伝達する
・杭の種類はいくつかあるがコンクリートが多い
ここでは上記のポイントを押さえておくところまでで話を終わりにします。
次回はそんな杭と基礎の関係について考えてみることにします。