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建物の下にある支持層

建物というのは地面の上に建てるものですが、もちろんそれは建物の荷重を地面で受け止めているから、という理由があります。
しかし「地面」についてもう少し深く考えてみると、単純に「地面」と言ってもそこには様々な種類があって、ただ地面の上に建物を建てるだけでは充分ではないことが分かります。

建物を支える地盤について考えるために、砂上の楼閣(さじょうのろうかく)という言葉を調べてみることにしましょう。
「楼閣」というのは高い建物というような意味があります。

楼閣という言葉は今ではあまり使いませんが、現在でも摩天楼(まてんろう=高層ビル群)という言葉に「楼」という言葉が入っていて、やはり高い建物を指しています。
「摩天楼」という言葉も歌詞とか漫画とか小説でしか出てこない雰囲気の言葉、という気がしますけど、まあそれはさておき。

しっかりとした楼閣を建てたとしても、それを砂の上に建ててしまうと早い段階で崩れてしまい長続きしない、つまり「実現不可能」などと言う意味を持った言葉です。
これは教訓的な意味を持つ言葉ですから細かく分析する必要はありませんが、建築的に考えるとやはり建物の荷重は支持層に伝達しなければ成り立たない、ということになります。

地面というのは皆同じだと思ってしまいがちですが、実際には土の成分や砂利の混じり具合、含んでいる水分などによってかなり違ってしまうものです。
非常に大きな荷重になる建物を建てるにあたっては、どのような地盤に建物の荷重を受け止めてもらうか、そしてその地盤がどの深さにあるかをよく検討しておく必要がある訳です。

建物の荷重を受け止めることが出来る地盤を「支持層」と呼びます。
一定の堅さを持った地盤でなければ建物の荷重を受け止めることは出来ませんので、その支持層が深い位置にある場合は杭などの工法を検討することになります。

地盤の堅さをはかる単位として利用されるのが「N値(えぬち)」もしくは「標準貫入試験値」と呼ばれる単位で、あまり聞き慣れないかも知れませんが非常に重要な数値なんです。
N値についての簡単な説明としては、決められた仕様のハンマーでロッドを地面に打ち込んで、そのロッドが30cm貫入するまでにかかる回数、という感じ。

だからN値が大きいと堅い地盤という事になる訳です。

例えば砂であれば一回の打撃でロッドは10cm程度進み、結果としてN値は3ということになり、非常に柔らかい地盤ということになります。
岩盤層で何度ハンマーを打ち込んでも少ししかロッドは進まず、30cm進むのに60回もハンマーを打ち込む必要があった、という場合のN値は60です。

支持層として建物の荷重を受け止めるには、N値が50以上の地盤というのが目安になり、そこまで杭や基礎など何らかの構造体を伸ばしていく必要があります。
N値50以上の地盤が浅い部分にあれば、そこに基礎を直接載せても良いですし、深い位置に支持層があればそこまで掘って基礎を載せるのは大変なので、杭を伸ばしていくという感じです。

建物を建てる計画をする際には、敷地のどの深さに支持層があるのかを知っておくことが非常に重要になってきます。
とは言っても、建物の施工をする前に敷地を全部掘ってみることは出来ません。
建物の構造が決まらないうちに施工を開始する事など出来ませんし、実際に掘ってみたら非常に深いレベルに支持層があった、という場合には恐らくそこまで掘り進めることは不可能です。

このように、事前に全部掘ってみるというようなことは難しい為、建物の設計段階で地盤状況を知るには「ボーリング調査」と呼ばれる調査が実施されることになります。

ボーリング調査

このような感じで地面をほんの少しの範囲だけ、深く掘ってサンプルを抜き出していくというのがボーリング調査です。
ハンマーを使ってロッドを地盤に打ち込んでいく訳ですけど、その際に当然N値を測定していくことになり、結果として地盤の状況とN値が調査出来る訳です。

敷地の広さによって調査箇所は様々ですが、広い範囲で何カ所もボーリング調査をすることによって、大まかに地下の地盤状況を把握していくことになります。
このボーリング調査によって支持層の深さを把握して、その支持層までどのような構造で建物の荷重を伝えるかを構造設計者が設計していく、という流れです。

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