鉄筋コンクリート造(RC造)の建物を施工していく際には、コンクリートの最終的な形状によって型枠をどのような形状に作れば良いかが決まってきます。
型枠とはコンクリートを流し込む為の型を指すものですから、コンクリートの出来型によって型枠の形状が決まる訳です。
構造図の条件を満たすことは当然として、見た目と施工性のバランスを考えつつ、なおかつ鉄筋の納まりも意識しながらコンクリートの具体的な形状を決めていく。
こうした流れは前回までの説明で取り上げて来ました。
コンクリートを意匠的に見せるのか、それともコンクリートは構造体としてだけ存在して最終的には他の仕上材によって隠れてしまうのか。
これによって型枠の加工を細かく決めていくのか、それとも構造体として問題ない事と施工性を重視していくのか、その方針が変わってくる訳です。
見せる部分であれば最終的な見え方を気にする必要がありますし、見えない部分であれば最終的な仕上から見えない位置である程度自由、という考え方ですね。
コンクリートを見せるか見せないか、そして見せる場合はどのような見せ方をするか、というあたりの考え方は型枠にも大きな影響を与えることになります。
コンクリートの見せ方を具体的に分類をすると、以下のような感じになります。
・意匠的にコンクリートの素材感を見せたい場合(コンクリート化粧打放し仕上)
・コンクリートに直接仕上をする場合
・他の仕上材に隠れてしまう場合
・特に仕上をするような場所ではないという理由でコンクリートを見せる場合
鉄筋コンクリート造ではコンクリートの仕上として上記のような分類が考えられ、この分類によって型枠の材料が変わってくる事になります。
これから上記の項目についてひとつずつ詳しく説明をしていく事にします。
□コンクリート化粧打放し仕上
型枠工事で最も気を遣うのは「コンクリート打放し」と呼ばれる仕上で、コンクリートの質感をそのまま意匠的に見せていくという考え方です。
コンクリートの素材感をそのまま見せていくという、最終的には仕上材で隠す事になる場合が多いコンクリートにしてはちょっと変わった仕上だと言えます。
完成形としては上記のような感じになり、まあコンクリートがそのまま見えてくるのでこんなイメージになるのは当然という感じがします。
コンクリート化粧打放し仕上は意匠設計者が好む仕上方法ですから、町を歩いていればよく見かけるのではないかと思います。
著名な建築家である安藤忠雄氏の代名詞と言える仕上でもあります。
ただし、コンクリート工事=仕上工事というシビアな施工になってしまうので、施工者泣かせの仕上でもあります。
コンクリート打放し = デザイン性が高い
というような風潮があるような気がしますが、私自身の考えをここで書かせてもらうと、個人的にはこれがデザイン性が高いとはどうしても思えません。
最近では全然珍しい仕上ではないので「また化粧打放しか…」という感じになりますし、建物の使い勝手などを考えると決して便利とは言えませんから。
もちろんこれは施工者側の考え方で、建物を意匠的にどう見せるのかを考えた時に、コンクリートの素材感を出したいとなるのはよく分かります。
だからこそ色々な建物でコンクリート化粧打放し仕上が採用されるし、採用されるだけあって雰囲気も悪くないという結果になるのだと思います。
セパレータの配置や型枠の割付などをきちんと計画していけば、最終的な見た目は洗練された雰囲気が出る仕上であることは事実です。
だからこそ意匠設計者が好む気持ちも当然理解できますが…
そのデザインを果たして施主が求めているか、という話になると、必ずしもそうではない場合があるような気が私にはしています。
見た目は確かに良いのですが、それを誰が求めているのか、というあたりが結構微妙なところではないかと思います。