前回は鉄筋コンクリート造の建物にはどのようなメリットがあるのか、というあたりについて以下のような項目を挙げてみました。
□現場で型枠を施工するため、ある程度時間的な猶予がある
□型枠は木で加工するため、形状の自由度が高い
現場で加工することが出来る材料である事によって、ある程度の時間的な猶予と形状の自由度がある訳ですが…
今回は上記を踏まえてその続きを説明していく事にします。
□外壁として止水ラインが完結する
ラーメン構造の場合は壁が構造的に必須という訳ではない、という話を以前構造スリットの説明をした際に取り上げました。
その際に同じような話をしましたが、構造体として必須ではない状況なのにコンクリートの壁が存在するのは、雨水を建物内に入れないようにという「止水ライン」の構築をする目的があります。
建物の基本的な性能として求められるもののひとつとして「雨の日でも快適に室内で過ごす事が出来る」という性能があります。
これは建物を利用する側にとっては、もう特に気に留めないくらい当たり前の性能になっていると思いますが、その当たり前の性能を確保する為には色々な苦労があったりするんです。
コンクリート壁という部材は非常に優秀な性能を発揮するので、雨水を建物の中に入れないようにという検討をしていく中では重要な役割を果たすことになります。
屋上などの外部床にはアスファルト防水という仕様の防水層を施工して、屋上の下にある居室などに水が漏れないように処理をします。
その場合は床だけではなく壁の足元にもアスファルト防水を立ち上げていくことになるのですが、そこにはやはりコンクリートが必要になってくるんです。
こうした納りは各所で発生してきて、コンクリート壁が防水を立ち上げる為に必要になってくる、というシーンは結構多いはずです。
外壁として比較的容易でしかもしっかりとした止水ラインを構築出来るというのは、やはり鉄筋コンクリート造の壁ならではの事だと言えるでしょう。
□色々なものを取付ける際にコンクリートだと容易
建物は構造体だけで成り立っている訳ではなく、例えば照明とか手摺とか看板などの様々な要素を組み合わせて施設として運用していくことになります。
様々な要素というと漠然としてしまいますが、建物を円滑に利用する為には本当に色々な要素が絡んでくるので、それぞれを綺麗に納める為の検討が必要になってきます。
また、法的に必要な手摺などの要素もあるので、法的に必要な要素と、建物の施設として必要になる要素と、それぞれを満たしておくことが求められます。
こうした検討を進めていくと、「これはどこに取り付ければ良いの?」という、些細ですが考えていくと結構重大な問題が出てきたりもします。
そうした時に、何かを取り付ける相手がコンクリートであれば、強度的にも取付け方法的にも問題ない事になる、というメリットがあります。
下地について考えるのは施工者の役割になりますが、コンクリートが下地であれば、もう相手としては申し分ないという感じになるんです。
S造で壁が押出成形セメント板になっているというような場合に、壁に取付けが出来ないなどで苦労をすることになって、コンクリートだったら良かったのに…みたいな感じになります。
これは結構地味なメリットに聞こえるかも知れませんが、実際に施工をする段階になって検討をしたりすると「そういう事か」と思うはず。
…という事で、鉄筋コンクリート造にはどのようなメリットがあるのか、というあたりの話はこのあたりで終わりにします。
構造設計からの視点が足りていない気がしていますが、説明する余裕が出来たら改めて取り上げてみたいと思っています。