コンクリートを流し込む為に組み立てられる型枠は、一般的には12mm厚の合板が利用されることが多いのですが、その理由はいくつかあります。
・木なので現場での加工が可能
・安価なのでコスト的なメリットがある
・コンクリートが硬化した後の解体が楽
これらのメリットの中で大きいのが、木という材料の特徴である「加工と解体のやりやすさ」なのですが、場所によってはそうした特徴があまり強みにならない場合もあるんです。
あまり複雑な加工が必要のない部分とか、コンクリートを打設した後で解体が必要ない部分であれば、加工がしやすくて解体が楽な木製の型枠を使うメリットはそれほど大きくない、という事です。
具体的な場所で言うと以下のような部分では、木製型枠よりも鋼製型枠の方が色々な面でメリットが大きいので、鋼製型枠が採用される場合が多いです。
・基礎 → 最終的に土に埋められたりする為型枠の解体が不要
・床 → 単純な形状になることが多く、天井裏になる為型枠の解体も不要
上記のなかで特に床については、鋼製型枠で施工するメリットが大きい為、特に大きな問題がない限り木製型枠で施工されることはない、というくらい一般的に鋼製型枠が採用されます。
鋼製型枠の場合、梁と梁の間に鋼製型枠を設置するだけで済んでしまうので、下の階から型枠を支える必要がないという大きなメリットがあるんです。
木製の型枠を採用する場合、あくまでも型枠のサイズは900mm×1800mmになりますから、ひとつの材料で梁と梁の間にかけることなど出来ません。
そうなると細かく下地を組んでそこに型枠を載せていくという「支保工」と呼ばれるものが必要になってしまう訳ですけど、床というのは面積が広いですからこれがなかなか大変な作業になります。
しかし鋼製型枠では長い寸法の部材を製作することが出来る為、例えば梁と梁の間が3mだったとしても、下図のように鋼製型枠を設置するだけで済みます。
木製型枠を採用した場合、支保工を作る手間がかかる事になり、支保工によって下階の作業に大きな制限が出るなどの問題があります。
鋼製型枠を採用する事によって、支保工をなくすことが出来て、それによって下階の作業スペースもきちんと確保することが出来るというメリットがあるんです。
あまりにもスパンが長い場所などで鋼製型枠を採用した場合、荷重に対して型枠の強度が保たないことがあり、支保工が必要になる場合もありますが…
よほど無理をしない限りはそうした状況になることは少ないですから、梁の配置などをきちんと計画しておくことで、鋼製型枠のメリットを最大限に生かすことが可能になるはずです。
ただし、下階から型枠を支える支保工が不要だということは、施工を進める上では確かにメリットになりますが、工事の安全という観点からはメリットとは言いがたい部分もあります。
鋼製型枠は梁と梁の間にかけることによって型枠として成立する訳ですが、どのくらいのスパンにかけるかによって必要な鋼板の厚みなどの仕様が変わってきます。
その為、鋼製型枠を採用するにあたっては、スパン長さや床の厚さなどによる鋼製型枠の仕様を綿密に検討していく必要があります。
もしその仕様を間違えたりすると、コンクリートを打設している最中に、コンクリートの荷重に耐えられなくなって鋼製型枠が脱落する可能性があります。
コンクリートを打設している際には、作業している方が何人も鋼製型枠の上に乗っていますから、それが脱落すると大きな事故になってしまいます。
なので、支保工が不要になるというのはどういう意味なのか、という事をしっかり受け止めつつ鋼製型枠を採用する必要があります。
もちろん木製型枠の場合でも型枠にかかる荷重を確認していく必要はありますが、鋼製型枠の場合は梁にかけるだけという手軽さがありますから、その利便性だけを見るのは危険だという事も認識しておく必要があるということですね。