鉄筋コンクリート造の構造体と最終的なコンクリート形状というのは、意匠的な納まりを考えた時に少し違ってくる事になります。
その場合は構造体のサイズを確保しつつ、コンクリートを余分に打設する事になり、そうしたコンクリートを「増し打ち」とか「フカシ」と呼ぶ。
…というような話を前回は紹介しました。
構造体サイズという前提条件をを守っていれば、増し打ちについての条件というのは特にありませんが、あまりにも大きく増し打ちをする場合は少し話が違ってきます。
鉄筋は基本的に構造体部分に入ることになる、という話は今まで説明してきた通りなのですが、大きく増し打ちをした場合には鉄筋が必要ないのか、という疑問があります。
極端な話をすると、構造体と同じくらいのサイズで増し打ちをする場合があったとして、構造体ではないので鉄筋が不要という事になるのか。
上記はいくらなんでも酷すぎる例ではありますが、実際にこうした状況がないとは言い切れないので、そう言った場合の考え方をきちんと整備しておく必要があるんです。
…と、ちょっと大げさな前置きになってしまいましたが、もちろん増し打ちが大きくなってしまう場合には鉄筋の補強が必要になってきます。
具体的な数値で言うと、増し打ちの寸法が80mm以上に大きくなる場合などでは、コンクリートだけではひび割れなどの懸念があるので鉄筋を入れることになります。
こうして増し打ち部分に入れる鉄筋を「フカシ筋」と呼びます。
今まで「増し打ち」という表現を使ってきたのに、ここでいきなり「フカシ筋」という言葉を使うのは不本意ですが、「増し打ち筋」という言葉はあまり聞かないんですよね。
なのでここでは「フカシ筋」という表現で紹介する事にします。
いくつ以上の増し打ちからフカシ筋を入れることにするか、どの程度の鉄筋を入れるかは構造の判断にもよります。
構造体ではないとは言っても、コンクリートと鉄筋に関する内容は、基本的に構造設計者が検討して指示を出すことになります。
とは言っても、やはりあくまでも増し打ちではあるので、フカシ筋の鉄筋仕様は構造体としての主筋よりは細い径になることが一般的です。
少なくとも構造体の鉄筋よりも太い仕様になる事はまずありません。
今回の例で考えると、増し打ちの寸法は27.5(55の半分)になりますから、特にフカシ筋を追加する必要はない、ということに。
なのでここでは追加する鉄筋などはなく、単純に型枠の位置を変える事で、増し打ちという考え方によって柱のコンクリートを打設していきます。
今回の例では柱型にタイルを貼ることを想定して話を進めましたが、タイルを綺麗に張る為には建物全体で考える必要があります。
なので当たり前の話にはなりますが、この柱だけのタイル割付を意識しても、全体的にタイルが綺麗に割れていないとあまり意味はありません。
実際には、まず建物全体のタイル範囲を確認して、その範囲全体でタイルの割付を検討していき、その結果として柱のコンクリート増し打ち寸法が決まる、という流れです。
結局は全体を意識しないとコンクリートの形状は決まらないという話です。
なので、全体を考えた時にタイルが綺麗に納まるには、もう少しコンクリートのサイズを調整する必要があるかも知れませんが…
・構造体のサイズは厳守する
・コンクリートの形状は最終仕上材の納まりによる
・全体の納まりを考えないと最終仕上は決まらない
というような考え方はイメージ出来たのではないかと思います。
これが建物の納まりを図面で検討していく大きな理由で、これが仕事として面白い部分でもあります。