前回は建物の構造として鉄筋コンクリート造(RC造)について簡単に説明をしました。
鉄筋コンクリート造は色々な建物で採用される構造でもあるので、比較的経験しやすい構造ではないかと思います。
型枠による制限はあるものの、コンクリートの外形がある程度自由になるというのは、やはり意匠設計者にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
今回は引き続き建物の構造についての話を進めていく事にして、鉄骨造(S造)の特徴について簡単に説明していきたいと思います。
鉄骨造というのは、これもまた読んだままになってしまいますが、建物の骨組みを主に鉄骨で構成していく考え方の構造です。
「S造」とも呼ばれますが、これは非常にシンプルな話で「鉄=steel」という意味になります。
ただ、鉄と言っても色々な仕様があって、単純な鉄では強度的に足りない場合もあって建物の構造にはなり得ないのですが…
そうした小難しい話はさておき、ここでは鉄を建物の構造に使うというシンプルな話をまずは覚えておくことにしましょう。
ただ、鉄骨造とは言っても建物の全てを鉄で構成する訳にはいかず、床などは施工のやり方などを考えて鉄筋コンクリートを採用する場合が多いです。
なので、鉄骨造では建物のメインフレームとなる柱と梁を鉄骨で組み立てていき、床は鉄筋コンクリートで構成する、という考え方が一般的になります。
鉄を組み合わせてH型にしたり□型にすると強度が上がるので、そうした鉄骨を柱や梁として利用していくことで建物にかかる様々な力に耐えうる構造になっていきます。
ただ、いくら強度が上がるとは言ってもあくまでも鉄ですから、やはり風雨に晒されると酸化してしまうという部分は鉄筋と変わりません。
そうした鉄骨が持つ特性によって、鉄骨を外壁周りに露出させることは出来ない、という意匠的な制約が出ることになりますが…
まあ鉄骨を外部にむき出しにしたところで全然見映えが良い訳ではないので、その点が意匠的に大きな問題になることはないでしょう。
鉄骨は工場で製作してくるものですから、あらかじめ計画しておいた形の鉄骨を現場で組み立てるという作業の流れになります。
工場で製作してきて現場では組み立てるだけの作業になる、という部分が鉄骨造の大きな特徴であり、メリットであると言えるでしょう。
これが同時にデメリットにもなり得る訳ですけど、とにかく「工場で製作して現場では組み立てるだけ」というのが鉄骨造の大きな特徴であることは間違いありません。
RC造は基本的に現場で型枠を組み立てて鉄筋を仕込み、そこに生コンプラントから運んで来たコンクリートを流し込むという流れになります。
そしてコンクリートが硬化して強度が出た段階で、型枠を解体すれば構造体としてのコンクリートは完成になり、あとはコンクリートの外側を仕上げていく工程に進む訳です。
それに対してS造は、あらかじめどのような形状の鉄骨を作るかを検討して、それを工場で製作したものを現場に搬入して組み立てていくという流れになります。
現場で型枠を作ったり、コンクリートの強度が出る間で待つ等の時間が不要になる為、S造では現場での手順を比較的少なくすることが可能になります。
それによってもたらされるの現場施工のスピード化、という部分が鉄骨造の大きな特徴なんです。
ただ、あらかじめ工場で鉄骨を製作するということは、あらかじめどのような考え方で鉄骨を製作しなければならないかを決めておく必要があります。
つまり最初の計画が非常に重要になってくるという事。
これは施工者サイドの話になってきますが、工事の序盤にある程度方針を決めて鉄骨の製作を開始するのは結構大変な業務になります。
それが上手いこといかなかった場合には「やっぱり直前に何とか対応が出来るRC造の方が良かったな…」とか思ったりする訳です。
もちろんRC造にはRC造の大変な部分があるんですけど、どうしても隣の芝は青く見えるというか、S造の大変さを考えるとRC造に目が行ってしまう事もあります。
とは言っても、S造を選択する事によって得られるメリットはたくさんありますので、S造特有の納まりなどをきちんと覚えておくことをお勧めします。