設計図をベースとして施工者が作成する「施工図」には、その役割によって幾つかに分類されることになる、という話を前回は取り上げました。
設計図の区分として意匠図と構造図があるのと同様に、施工図にも仕上図と躯体図が存在しているという話でした。
とは言っても基本的に施工図は以下のような考え方で作成・利用される事になる図面だという事は変わらないので、厳密に分類しなくても問題はありません。
・設計図をベースにしている図面である
・実際の施工をするために具体的な情報が記載されている
こうした考え方で作図されるのはどの施工図も同様なので、単純に「施工図」というくくりだけでも仕事を進めるのに大きな支障はないはずです。
ただ、説明する為には区分があった方が分かりやすいという事で、当サイトではこうした区分をあえて説明することにしています。
今回はそうした施工図の中で、躯体図について取り上げてみる事にします。
構造図をベースにして作成される躯体図は、主に建物の構造的な部分について工事を進める為に必要となってくる図面です。
建物の構造と言うことはつまり鉄骨と鉄筋とコンクリートという事になるので、躯体図はそうした部分をメインにしている図面という事になります。
建物の構造というのは、建物がそれぞれ持っている特徴によってどの構造が適しているかが違ってくるものです。
構造としては「S造」と「RC造」と「SRC造」という大きな分類がある訳ですが、木造の一軒家などの小規模な建物ではない限り、基本的にはどこかにコンクリートが使用されます。
コンクリートがあるという事はつまり鉄筋が必要になるという事を意味していて、コンクリートを現場で施工する為に作図されるのが躯体図(くたいず)という事になります。
どのような建物であっても鉄筋コンクリートは存在するので、結局はどのようなプロジェクトであっても必ず躯体図は作図されます。
建物の構造というのは建物にとって非常に重要な存在であるのと同様に、施工図の中で躯体図という図面は非常に重要な役割を果たす事に。
躯体図の中にも色々な種類があって、その種類はそれ程多くはありませんが、どんな建物でも作図されるのは以下のような躯体図になってきます。
・杭伏図
・基礎伏図
・床伏図
・見上図
・躯体断面図
コンクリートがどのような構成になっているのかを考えてみると、まずは砂や砂利などの骨材と水、そしてセメントを混ぜ合わせたもので構成されています。
混ぜ合わせた当初は柔らかい状態ですが、水とセメントとの科学反応によって時間の経過とともに硬化して強度が出てくる、という性質をコンクリートは持っています。
この「化学反応によって硬化して強度が出る」というあたりが大きなポイントでしょう。
このような性質を持つコンクリートですから、まずは現場でコンクリートを流し込む為の型を作成して、そこにコンクリートを流し込んでいくという手順がコンクリート工事の基本です。
流し込んだコンクリートが固まるまで一定期間を待ち、コンクリートの強度が出た時点で型を壊していくという流れで工事は進んでいく事に。
コンクリートを流し込む為の型というのはいくつかの種類がありますが、圧倒的に多いのは合板を組み合わせてつくる木製の型枠になります。
場所によっては金属で構成された型枠もあるものの、加工性の良さや解体のやりやすさ、単価などを考えていくと、やはり合板を使用した型枠が有利になるのでしょう。
木製の型枠をどのようなサイズで作成するかによって、流し込んで固めるコンクリートの最終的な形状は変わってくることに。
最終的にコンクリートをどのような形状にするのかという事はつまり、木製の型枠をどのような形状で造っていくのかという事で、躯体図はそうしたコンクリート情報を盛り込んだ図面になります。