前回は設計図の一部として必ず入ってくる「特記仕様書」の便利な使い方というか、ちょっと都合の良い使われ方について説明してみました。
基本的に設計図というのは、建物がどのような形状になっているのかを誰が見ても分かる「図」の状態で表していく事が求められます。
しかし特記仕様書には図が全然記載されていない状態で、単純に文字の羅列で色々と重要な事が、しかも小さな文字で書いてあったりします。
設計図をベースにして見積をかける場合などでは、コストを左右する非常に重要な事がサラッと書いてあったりするので困る場合も。
このような状況を考えると、特記仕様書という図面は施工者にとってかなり厄介な存在ではないかと思います。
もちろん特記仕様書はこっそりと添付されている訳ではなく、正式な設計図の一部として存在しているので、設計者が変な裏技を使っている訳ではありません。
いくら文字が細かくて図がない情報とは言っても、そこに重要な情報が盛り込まれている訳ですから、時間をかけて文字を追いかけていく必要がある。
という単純な話なんですが…設計図を見慣れていない方はあまり特記仕様書を見ない傾向にあるので、なるべく重点的に見ていくことをお勧めします。
こうした特記仕様書への恨み言はこのあたりでやめておき、今回は設計図が記載している情報についてもう少し考えてみる事にします。
設計図は建物を建てていく上で指針となる図面。
これは以前から繰り返している話ですが、ちょっとひねくれて逆に考えると「設計図はあくまでも指針」であるとも言えます。
建物を造っていく際の指針という事で色々記載されていますが、寸法を含めた具体的な表現を突き詰めていないという特徴もあります。
どういった事がやりたいかは何となく書かれているけれど、実際に細かい部分をどうしていくかについては設計図を読み込んでいっても詳しく書かれていない。
ちょっと聞こえが悪い表現をすると、そうした状態になっている部分があります。
いくら建物の基本方針となるべき設計図とは言っても、建物の全ての部分について細かく記載されている訳ではありません。
これはなぜかと言うと、大きな理由としては２点あります。
・設計者が実際に施工をする訳ではないので具体的な情報は盛り込まない
・あまり設計段階で明確に決まっていない場合が多い
というようなことが理由としては挙げられます。
設計段階で決まっていないというよりも、設計段階ではそこまで細かい部分について決まってなくても大丈夫、という表現の方がしっくりくるかも知れません。
設計段階ではそこまで細かく決まっている必要もないですし。
また、設計図を作成している段階では、施工者が実際に採用する事になるメーカーが分からなかったりするという理由もあります。
そうした理由によって、設計段階では細かい部分の納まりについて具体的な検討を進めるのはなかなか難しいものがあるんです。
そのあたりの話は、設計段階で具体的な検討は難しくても、施工段階で色々打合せをしながら調整していく事になります。
その結果として具体的な検討と寸法などが決まっていく、という流れに。
そうした作業はあくまでも施工段階でなければ進められない内容になっているので、設計段階ではそこまで表現するのが難しいという現実があります。
そうした理由から、設計図では寸法などの具体的な表現があまり多くない、という状況になっている訳です。
これは設計図の精度が悪いというような話ではなく、検討の順番を考えると自然とそうなってくる、という事が言えます。
