建物の納まりについての考え方が設計者と施工者とで違ってくる場合、お互いの意見をすり合わせて調整していく必要があります。
どのような感じで意見が違ってくるのか、というあたりの話について前回簡単に取り上げてみましたが、色々なところでこうした意見の食い違いというのは出てくるものです。
設計者と施工者の考え方が違うままで、どちらも妥協しない状態では話が進んでいかない事になり、それではお互いに困ってしまいます。
話が進まないという事はつまり仕事が進まないという事になるので、仕事を進めるにはお互いにある程度妥協しながらの調整が必要に。
建物を造っていく仕事の中でこのような調整は頻繁に出てくる事になる訳ですが、ここで設計者と施工者との関係性についても考えてみることにします。
お互いの関係性を調べていくと、どちらが納まりの検討で妥協をしていく事になるのか、などの話が分かってくるはず。
もちろん企業同士の関係には色々なパターンがあるので、設計者と施工者との関係をここで簡単に表現しきれる訳ではありませんが…
ひとまず一般的な関係性を見ていくなかで、どのような状況になるのかを調べてみることにしましょう。
設計者と施工者との関係性は、立場として優劣がある関係ではなく、基本的に対等な立場で業務を進めるということになっています。
設計者であれば施主から設計業務を、施工者であれば施主から施工業務を、それぞれ請け負っているという意味で、確かに対等な関係だと言えるでしょう。
そう言った意味で、建物の基本方針は設計図に記載されているとは言え、施工者も施工のプロとして様々な意見を述べていく事になる訳です。
出来るだけ良い建物を造っていくという共通の目的がある為、施工者側から設計者に対して色々な提案などしていく、という感じになります。
ただ、関係性としては対等と言いながらも、設計者に対して施工者側が変更の提案をしていき、その提案を設計者が判断していくという流れ。
こうした提案と判断という関係性は、やはり対等とは言えないものがある、という感じです。
実際の業務を経験してみても、やはり設計者と施工者は対等な関係で仕事を進めている訳ではない、という現実が見えてくるような気がします。
少なくとも私が経験してきた中では、という話ではありますが。
建物の基本方針を設計図という形で発行して、設計図の通りに施工が進められているか施工者を監理していく役割を持っている設計者。
設計者が発行する設計図をベースにして施工図を作成して、施工を開始する前にその施工図は設計者の承認を得なければならない、というプロセスが必要な施工者。
設計図と異なることを施工者が提案する場合には、基本的に設計者がその内容と意図を確認してOKかNGかを判断することになる関係。
設計図同士で異なる内容の表記があった場合でも、施工者から質疑書で「どちらを正と考えれば宜しいでしょうか」というような確認をしていく流れ。
こうした色々な部分を見ていくと、設計者と施工者が対等な立場で施工を進めていくことは難しい、というような雰囲気が漂ってきます。
建物の基本的な考え方を判断するという役割を持っている設計者の方が、やはり立場としては少し上という感じになってきます。
もちろんこれは一般的な話なので、全ての組織がそうなっていると言う話ではないです。
施工者は設計者からお金をもらって施工を進めている訳ではなく、あくまでも施主と施工の契約をしている関係になっています。
ただ、設計者の発言や判断によっては、契約しているコストに影響があるのも事実。
施工者が重点的に管理していきたいコストに対して、多大な影響を与える可能性がある存在が設計者になるので、微妙な関係であることは間違いありません。